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11/23-24 創作週間スペシャル・木版画「色彩木版画カレンダーで新年を飾ろう!!!」

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11月23日と11月24日の2日間、創作週間スペシャル「色彩木版画カレンダーで新年を飾ろう!!!」が開催されました。静岡県立美術館の実技室では、月に5日間、誰でも自由に制作活動ができるアトリエとして実技室を開放している「創作週間」を開催しています。そして「創作週間スペシャル」は、更に専門的な技法を学びたい方向けの講座として、年数回開催しております。今回の「創作週間スペシャル」では、一年間お部屋に飾ることをテーマに、木版画作品で2020年のカレンダー作りに挑戦しました。木版画がほとんど初めてという方から、いつもご参加いただいている方まで、幅広い皆様にご参加いただきました。

 

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今回ご指導いただきましたのは、木版画家・藤田泉先生です。いつも「創作週間」の際にも長年講師としてお越しいただいている、藤田先生。今回の講座のために、ご自身で制作された木版画の作品や版をたくさん持って来てくださいました。下絵から完成した作品まで、途中の工程が分かる資料までご用意いただき、大変参考になりました。今回お持ちいただいた参考作品は、先生ご自身がカレンダー用に制作されたものだそうです。草花や虫、動物などが描かれた四季の美しさを感じる先生の作品に、参加者の方の注目が集まっていました。

 

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「色彩木版画」は色ごとに版を分け、摺る時に重ね合わせることで1つの作品を作っていきます。色数が多いほど多くの版が必要となり、その分時間も根気も必要となります。2日間の短い時間での制作となるため、参加者の方には、事前に下絵を描いて来ていただきました。中には着彩のイメージまでしっかりスケッチブックに描き込んで来てくださった方も…。描いた下絵は、先ず初めにトレーシングペーパーに写します。次にそれを反転させた状態で、色ごとに分けて版木へと転写していきます。今回、版木は1人2枚まで使うことができるので、裏表を全て使えば最大4版まで作ることができます。

 

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版木に下絵を写し終えたら、次は彫りの工程になります。彫刻刀を使い版木を彫っていきますが、なかなか普段使い慣れていないと難しい工程となるので、藤田先生より彫刻刀の持ち方や使い方についてレクチャーしていただきました。彫刻刀は一般的に、切り出し刀、平刀、丸刀、三角刀の4種類が使われることが多いですが、今回もこれらを使い分けることで作品を彫り進めていきます。最初に登場するのが、刃先が刀のように尖った形の切り出し刀です。絵の外側に向かって斜めになるように握り、下絵をなぞるように切り込みを入れていきます。その後、他の3種の彫刻刀を使い分けながら、不要な部分をさらっていきます。

 

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レクチャーを受けた参加者の皆様も、さっそく自分の作品を彫り始めていきます。先生が彫っている姿は簡単そうに見えても、自分でやってみるとなかなか難しいもの…。必要な部分までさらってしまわないように、慎重に彫り進めます。作品の絵となる部分の他に、「見当」も一緒に彫る必要があります。「見当違い」の語源とも言われるこの「見当」は、複数の版がある場合に、それらをピッタリと合わせて摺るための、ガイドの役割を果たす印となります。長時間彫刻刀を握り続けるかなり集中力のいる作業ですが、勿論安全第一で皆様には彫り進めていただきました。

 

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特に最大数である4版分の制作が必要な方にとって、彫りは本当に大変な工程だったと思います。お昼休みや休憩も挟んでいただきながら、大半の方が1日目のほとんどを彫りの作業に力を注いでいました。終了後は、家に帰ってゆっくり手を休めていただきたい…と思うところですが、家でも続きを頑張ると道具を一式持ち帰った方も中にはいらっしゃいました。皆様のやる気の高さには、スタッフ一同本当に感服いたします。

 

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作業の早い方のために、一日目のうちに摺りのレクチャーも行われました。使用するのは、事前に制作したスタッフによる作品です。彫り終えた版木は、摺る前に霧吹きなどを使って湿らせ、乾かないようにビニールシートに閉じておきます。これと同じように、摺る紙の方も事前に湿らせておきます。

 

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木版画の摺りの工程では、様々な専用の道具を使用します。竹ぼうきを小さくしたような見た目の「はこび」は、水で溶いたヤマト糊を版木に乗せたり、溶いた絵の具を刷毛に付けたりする時に使用します。ヤマト糊を版木に乗せたら、上から絵の具を付けた刷毛で、絵の具と糊を混ぜ合わせるように色を刷り込んでいきます。

 

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色を乗せ終えたら、版木の「見当」にピッタリ合うように慎重に紙を置きます。滑りが良くなるように、間に「当て紙」を敷き、最後に椿油を薄く塗った「ばれん」で摺ります。

 

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そして、ゆっくり紙をめくってみると…とてもきれいに摺り上がっています!紙を持ち上げる前に、片側に文鎮を置いておくことも忘れずに。もし摺りが足りなかった時なども、そのままの位置でやり直すことができます。この作業を、作った版の数だけ繰り返せば完成です!

 

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参加者の皆様の制作の様子も見ていきましょう。一番早い方は、2日目の午前中には摺りの作業に入っていました。木版画の経験が何度もある方は、慣れた手付きでどんどん摺りを進めます。

 

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中には色をグラデーションにする、上級者向けの技法に挑戦された方も!今回は水彩絵の具を使用していますが、水を上手く使うことで、きれいなグラデーションを作ることも可能です。色の乗せ方によって様々な表現を楽しむ事ができるのも、木版画の魅力の一つですね。

 

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下絵のイメージ通りに摺るのはとても難しいことかもしれませんが、そんな皆様の葛藤にも、藤田先生がお一人お一人に寄り添ってアドバイスをして回られていました。思い通りに仕上がった時の嬉しさは格別だと思いますが、時には想像と違っていても、それ以上の新しい魅力と発見が制作を後押ししてくれます。

 

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2日目の後半になると、皆様の作品が続々と仕上がってきました。色の重なりや細かい線での表現など、皆様の隅々までの拘りが素晴らしいです。

 

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そして、2020年の色彩木版画カレンダー完成!

 

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仕上がった作品を一度スキャナーでパソコンに取り込み、編集をしてからカレンダーとしてプリントアウトしました。プリントアウトしたものでも、木版画独特の温かみはしっかりと感じられます。

 

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カレンダー部分のデザインは、参加者の方にそれぞれ選んでいただきました。作品のイメージとカレンダーのデザインがとても良く合っていて、どれも素敵ですね。

 

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また、この2日間での完成が難しかった方は、後日「創作週間」の藤田先生の在室日に、また改めてお越しいただきました。最後は無事、全員の方のカレンダーが完成しました!お忙しい中ご来館いただきまして、誠にありがとうございました。そして木版画の制作、本当にお疲れ様でした!

 

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こちらは、途中でレクチャーの際に登場したスタッフによる作品です。色が変わり、作品の印象もまたがらりと変わっています。木版画でしか表現できない毛並みの表現がとても味わい深いですね。

 

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最後は、講師の藤田先生による作品のカレンダーです。今回の講座の参考作品として、広報などにも使用させていただいた作品になります。≪花窓≫というタイトルの作品だそうですが、その名前の通り、花と図形のパターンと、色のコントラストがとても印象的で美しいです。

 

木版画の作品をカレンダーにして飾ると、木版画の作品がもっと身近に感じられるのではないかと思います。制作にご参加いただいた皆様には、是非一年間、お部屋に飾っていただけましたら嬉しいです。また、これからも木版画の制作を続けたい方や、これから新しく木版画を始めてみたいと思う方は、是非「創作週間」の藤田先生在室日にお越しください。(詳しくは、静岡県立美術館公式ホームページより、最新の実技室プログラムの情報をご確認ください。)スタッフ一同、いつでも皆様のまたのご参加をお待ちしております!