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9/7・9/8 実技講座「見る・描く・飾る 誰でも気軽に絵を楽しめるアクリル画講座」

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(講座2日目の参加者の作品)

9月7日(土)・9月8日(日)の2日間「熊谷守一 いのちを見つめて」展関連講座として、「見る・描く・飾る 誰でも気軽に絵を楽しめるアクリル画講座」が開催されました。普段絵画にあまり馴染みのない方や、アクリル絵具を使うのが初めての方にも気軽に絵を楽しんでいただける講座として、2日間合わせて20名以上の方にご参加いただきました。

 

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参加者は、「熊谷守一 いのちを見つめて」展を鑑賞した後に色の三原色について学び、花と≪考える人≫レプリカをモチーフにアクリル画に挑戦しました。

 

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今回の講座で講師を担当していただいたのは、静岡県三島市出身の画家、渡辺有葵さんです。

渡辺さんは現在東京を中心に活動をされています。音や香りなど目に見えないものや、海外での取材旅行の体験をきっかけに五感で感じたことを表現するなど、抽象的な絵を中心に描かれています。

 

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講座の初めに、参加者は講師の渡辺さんや美術館スタッフと共に「熊谷守一 いのちを見つめて」展を鑑賞しました。

熊谷守一は、1880(明治13年)年に岐阜県中津川市の裕福な家に生まれ、1900(明治33年)年には東京美術学校に入学、その後首席で卒業する程の腕を持っていました。守一に確かなデッサン力があることは当時の作品からも伺い知ることができますが、ある時期からその作風に変化が見られるようになっていきます。後に「モリカズ様式」と呼ばれるこの独自の画風は、主に赤鉛筆で描かれたくっきりとした輪郭線と、その間を簡明な色彩で埋める描き方が特徴ですが、この描き方が完成されたのは守一が70歳を超えてからのことでした。そして、守一は1956(昭和31年)年に脳卒中の発作を起こしたことがきっかけとなり、外出を控える暮らしを強いられることになります。それ以来、守一は自宅の庭にやってくる動物や鳥、虫、そして草花を多く描くようになりました。守一が“いのち”を見つめて描いたこれらの作品は、単純化された形態の中にもその生き物の特徴が良く捉えられており、その観察力の高さと計算された構図や色彩も相まって、動き出しそうな生命力に溢れています。

講座参加者の方も講師の渡辺さんも、そんな熊谷守一の特徴的な作品を、興味深そうに鑑賞されていました。中でも、赤鉛筆の輪郭を残して絵具を乗せていく手法の繊細さに驚いている方は多かったです。

 

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鑑賞から実技室に戻り、改めて渡辺さんに自己紹介をしていただきました。スライドショーを使って、過去に制作された作品や個展の時の画像を、その時のエピソードなども交えながら紹介していただきました。渡辺さんは、例えば音や花の香りなど目には見えないものや、五感で感じたものからインスピレーションを受けて作品を描くことが多いそうです。過去にはバンジージャンプで飛んだ体験や、ライブペインティングの経験から生まれた作品もあるそうです。2014年の夏にはバックパッカーで1ヶ月間、ドイツのライプツィヒ、ベルリン、ブレーメンを取材旅行し、その時の思いもよらない悔しい経験からインスピレーションを受けて描いた作品は、見事賞を受賞したそうです。ポジティブな出来事だけでなく、時にはマイナスの経験が自分の想像を超えて良い作品に繋がる事もあると、渡辺さんは言います。

 

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さて、鑑賞と講師紹介を経て、いよいよアクリル画制作のスタートです。先ず初めに、渡辺さんより描き方のレクチャーをしていただきました。

テーブルの上に置かれたモチーフのバラの花を見ながら、どういった手順で描いていくのかを、実際にA4サイズの紙に描きながら説明していただきました。最初は鉛筆で、全体の大まかな形を捉えていきます。この時にはまだ細かい形は描こうとはせず、段階を踏みながら徐々に形を追求していくことが大切です。また、この最初の段階で描いた線が、その人の個性や作品の味わいに繋がっていくと言い、今回は敢えて消さずに残しながら描いてほしいとのことでした。

 

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鉛筆の次は、ダーマトグラフと言う色鉛筆に似た画材を使って、輪郭線を追及していきます。ダーマトグラフは、芯に油分が多く含まれているため柔らかく、ガラスや陶器にも描くことが可能な画材です。このダーマトグラフの黄、赤、青(藍)の三原色と黒色を、薄い色から濃い色へと順番に使用することで、少しずつ描きたい物の形を見つけ出していきます。

 

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ダーマトグラフを使ってモチーフの形を描き取ることが出来たら、いよいよアクリル絵具を使って描いていきます。今回使用できるアクリル絵具の色は、ダーマトグラフと同じ三原色と黒のみです。渡辺さんは、作品の色を選ぶ時には、この三原色の比率を意識すると良いと参加者に説明しました。その比率とは、7:2:1で、例えば赤色が7割なら黄色は2割で青は1割、黄色が7割なら青色は2割で赤は1割…といった具合です。渡辺さんによると、多くの名画にはこの色の比率が見られるそうで、熊谷守一の描いた作品にも、この比率で描かれていると思われるものがいくつかあるそうです。

 

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渡辺さんが先ほどダーマトグラフで描いたバラの絵に、更に三原色の比率を意識しながらアクリル絵具でお手本を描いていただきました。渡辺さんのこのお手本では、青が7割、黄色が2割、赤が1割です。この比率さえ守られていれば、画面のどこにどの色を置くかは描く人の自由で良いそうです。あまり考えすぎず、自分の感性のままに描いてみてほしいとのことです。

 

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渡辺さんによるレクチャー後、参加者は早速鉛筆を手に取り、各テーブルに用意されたモチーフのバラか≪考える人≫レプリカを見ながら制作をスタートしました。今回作品を描いていくキャンバスは水彩・アクリル用のキャンバスで、サイズは約30㎝×40㎝です。普段あまり絵を描かない方にとっては、少し大きく感じるサイズかもしれません。

 

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渡辺さんのレクチャーの通り、ダーマトグラフを黄色、赤色、青色(藍色)、そして黒色の順番で使い、自分の描きたい形を少しずつ追求していきます。

 

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全員同じバラがモチーフですが、バラの花全体を描いている方や、花の部分を画面一杯に描く方、また花瓶まで丁寧に描く方もおり、線を描く段階で既にそれぞれの個性が形になって来ていますね。

 

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輪郭線の追及も、青色(藍色)の段階まで来るとかなり形がはっきりとします。

 

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三原色で描いた後に、最後に黒のダーマトグラフで最終的な線を決定します。鉛筆のみのスケッチやデッサンとは違った、色を段階的に分けて描き進める今回の方法を、新鮮に感じる方は多かったと思います。

 

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制作のスピードが速い方は、あっという間に筆を手に取りアクリル絵具で描き始めていました。三原色の比率の中で、最も大きな割合の色から塗り始めます。7割の色から塗ることで、完成していく作品をイメージしながら描きやすいそうです。

 

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色の比率や色を置く場所の他、筆のタッチもその人だけの作品の雰囲気を生み出していきます。

 

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塗り進めていくと、三原色の7:2:1を守りながら描くことが、なかなか難しいことに気が付きます。限られた面積しか塗れない色を画面のどの部分に置くのか試行錯誤しながらも、比率を意識して描くことを参加者の皆さんは楽しんでいる様子でした。

 

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1枚目のキャンバスの作品が、そろそろ完成に近づいてきました。

 

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参加者の皆さんが制作をされている横で、講師の渡辺さんも同じように作品を制作されました。時々参加者の方へのアドバイスも行いながら、渡辺さんはあっという間にキャンバスにバラの絵を描き上げていました。

 

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お昼休憩を挟み、午後からは2枚目のキャンバスの制作もスタートです。

1枚目は色の三原色で描きましたが、2枚目は“二次色”を利用して描きます。二次色とは、三原色を混ぜ合わせて出来る色のことです。赤と黄を混ぜ合わせて出来るオレンジ色、青と黄を混ぜ合わせて出来る緑色、そして赤と青を混ぜ合わせて出来る紫色が二次色になります。2枚目も1枚目と同じ手順を辿りながら、この二次色でモチーフを描いていきます。ダーマトグラフにもオレンジ、緑、紫色があるので、ダーマトグラフの段階ではこの二次色で描いてみても良いし、もう一度三原色で描いても良いということでした。(ダーマトグラフで二次色を使う場合は、オレンジ、緑、紫の順番が良いそうです。)

 

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1枚目をまだ描き終えていない方は午後も引き続き制作を進め、早い方は2枚目に取り掛かり始めます。最後の仕上げの線に使う黒のアクリル絵具は、青色(藍色)と、こげ茶色を各自紙パレットの上で混ぜ合わせて作ります。チューブの状態などで売られている黒色はほとんどが無彩色だそうですが、一方で青色(藍色)と、こげ茶色を混ぜて作る黒色は有彩色になると言い、画面の他の色にも馴染みやすい自然な黒になるそうです。

 

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午前はバラの花、午後は、≪考える人≫レプリカを描いている方が多かったです。渡辺さんも、午後は≪考える人≫レプリカで作品を制作されました。

 

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三原色を混ぜ合わせて作った二次色で描く≪考える人≫は、どこか重量感が感じられます。

 

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バラの花の時と同様に、画面の使い方は参加者によって様々です。≪考える人≫の肩や背中を大きく捉えた構図で描かれた作品は、とても迫力がありますね。1枚目はなかなか手の進まなかった方も、2枚目ではのびのびと勢いに乗って描かれているように感じました。

 

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午後の制作時間もあっという間に過ぎ、講座の最後には、全員の作品を机の上に並べて鑑賞会が行われました。

 

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(講座1日目の参加者の作品)

 

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(講座1日目の参加者の作品)

 

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(講座2日目の参加者の作品)

 

同じモチーフ、同じ条件の元描いていただきましたが、それぞれ個性に溢れた素晴らしい作品が完成したと思います。形の追及をしながら最後はくっきりとした輪郭線で描き、簡明な色彩で表現する今回の描き方は、どこか熊谷守一の描き方に通じる部分がありますね。三原色、又は二次色を7:2:1の比率で描いてみることで、これまでにはない新しい発見があった方もいらっしゃるかもしれません。

 

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(講師渡辺さんによる1日目講座の作品)

 

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(講師渡辺さんによる2日目講座の作品)

 

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さて、今回の講座のタイトルは、「見る・描く・飾る 誰でも気軽に絵を楽しめるアクリル画講座」です。描いた作品はぜひ飾ってみてほしいと、渡辺さんは最後に参加者の皆さんに伝えました。机の上で描いている時と壁に飾ってみた時とでは、作品の印象も変わってくると言います。完成した作品は、ぜひご自宅に飾って楽しんでみてくださいね!