カテゴリー: 美術館の独り言

美術館の独り言

12/8・9 実技講座「樹花鳥獣図屏風を3Dにしよう」

 

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実技室プログラムのお知らせです。12月8日・9日の2日間で、現在開催中の「めがねと旅する美術展」出品作家の、山田純嗣さんをお招きして、2日間の講座を実施しました。山田さんは美術史上の名画を立体化し、それを撮影したものの上からさらに描写を重ねるという、独自の技法で制作をされています。

今回の講座では、山田さんの作品プロセスの一部に倣って制作しました。ワークショップでは、メガネやカメラに相当する手作りの装置を覗きながら、当館所蔵の伊藤若冲《樹花鳥獣図屏風》の右隻をジオラマとして再現しました。装置から立体化された作品を覗いてみると、どうなるのでしょうか?当日の様子をご覧ください。

<1日目>

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まずは山田さんご自身の作品についてのご紹介と、今回作るメガネやカメラに相当する装置についての説明がありました。山田さんの目の前に置かれている木箱が、その装置です。装置は木製の箱で、のぞき穴が付いています。まずは一人一つの箱を作るために、板をグルーガンで接着させて組み立てる作業から始まりました。

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次に、樹花鳥獣図屏風をプラスチック板にトレースします。このプラスチック板が、動物を配置するときに重要な目印の役目になります。

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そして、背景用に竹ひごを2本通します。最後にこの竹ひごから、背景の植物や動物を吊るします。さらに地面になる底面を、樹花鳥獣図屏風の見本を見ながら塗っていきます。本物を一見すると緑のベタ塗りに見えますが、茂みの線など、微妙な表情をつけて塗っていきます。IMG_2878

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地面が完成です。地面と草の絶妙な色合いが表現されています。

 

お昼を挟んで、いよいよレジンで動物たちを型取りします。こちらの山田さん作成のシリコン型を使用します。レジンを流し込む前に、離型剤を塗ります。

 

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レジンは2種類の液の反応で固まります。あらかじめ、それぞれ同じ分量を量っておき、一気に混ぜて、シリコン型に流し込みます。すぐに硬化が始まるので、手早く作業します。

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このまま10分程度固まるまで待ちます。型は4種類あるので、この工程を4回繰り返します。
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こちらが方から外した状態です。これからパーツごとに外して、ヤスリやカッターを使って、形を整えていきます。IMG_2895

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とても細かい部品の数々!これほど沢山の動物が屏風の中に居たことに驚きます。作られたパーツと、屏風を照らし合わせて、パーツがそろっているか確認します。

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レジンの気泡が入って、穴があいた場所は、パテで埋めて、一晩置いてからヤスリで削ります。ここで一日目が終了です。

 

<2日目>

昨日に引き続き、レジンで作った動物の形を整えます。昨日パテで埋めた部分もヤスリで整えます。細かい凹凸がありますので、削り落とさないように慎重に進めていきます。

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このように、小さいパーツを作業しやすいように工夫されている方もいらっしゃいました。

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ときどき箱の中に入れてみて、完成を想像しつつ、一休憩…。

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形成が完了次第、着彩に移ります。動物の種類は沢山ありますが、それぞれ共通した色が用いられている箇所があります。山田さんが、それぞれのベースの色とアクセントの色を書きだしてくださったので、これをヒントにして塗っていきます。それぞれの立体に共通する色を一気に塗って、上に重ねて着彩するのがポイントです。

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よく見ると、動物たちには、さまざまな模様があります。はたして、どこまで再現できるのでしょうか…

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一つ一つの動物が形になると、この動物はどこを向いているのか等、表情が気になってきて、つい動物同士のストーリーを考えてしまいます。

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最後に、動物を固定して、手前と奥の植物を設置したらついに完成です。

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上から見ると、このような配置になりました。

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意外と動物同士に距離があり、少しバラついて置かれているように見えるのですが、穴からのぞいてみると・・・

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樹花鳥獣図屏風の世界になっています!のぞき穴という限られた視点から見ると、私たちのよく知っている樹花鳥獣図屏風の絵になっています。なんだか不思議な気持ち…。

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今回のワークショップでは、お馴染みの《樹花鳥獣図屏風》をテーマにしましたが、平面の作品を立体化することで、空間という新しい視点が加わり、動物たちの配置を考えたり、一つ一つ見ていくことで、新たな発見をすることができました。これから他の作品を鑑賞するときに、誰の視点から、どのように見たのか考えたり、描かれているモチーフから見た視点など、平面と立体を往来するように鑑賞すると、作品の見方が広がりそうですね。

美術館の独り言

9/19 わくわくアトリエ「御紋でござる!」

実技室プログラムのご案内です。

9月19日(月祝)にわくわくアトリエ「御紋でござる!」が開催されました。

今回も講師には、切り絵アーティストの福井利佐さんにお越しいただきました。
実技講座は中学生以上の大人向けの内容でしたが、わくわくアトリエは小学生から大人まで、
親子で参加できるやさしい内容になっています。午前・午後と2回の開催でしたので、お好きな方の回に参加いただきました。

 

今回は、今開催中の「徳川の平和」にあわせて、江戸時代に流行した紋切の方法で
「平和」をテーマにして自分のマークのような作品をつくってみました。

紋切というのは、1枚の紙を何回か折って切って広げて文様をつくる方法で、
最初は紋切の仕組みをわかっていただくために、皆で花を作ったり、
思い通りの形ができるかどうか試作しました。

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今回は小学校1年生のかたから参加してくれました。
カッターはもちろん、はさみもそれほど使った経験がない子も多いので、
試し切りに入る前に、最初に福井さんから丁寧に切り方を教えていただきました。

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?切り終わってから広げたときに出た予想外な模様も面白かったりします。
4つ折りだけでなく、5つ折りで試してみたり、適当に切ってみたり…

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作品に使えるかどうか試しながら、いざ本番へ!
2時間ちょっとという短時間でしたが、複数の作品を
完成させたかたもいらっしゃいました。

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そして最後は、みんなで鑑賞会です。
こちらの講座でも、一人ずつ作品に込めた思いを簡単に説明していただきました。

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今回「平和」をテーマにして、少し難しそうに思えましたが
皆さんそれぞれ自分にとっての平和や願いを、子どもたちなりに考えて、作品に表現してくれました。
つばめ・つる・かめといった縁起の良い動物をところどころ使った作品が多く見られました。

「なんとなく面白くて作っていたらできた!」という子もいて、素敵な文様ができていました。
きっと江戸時代の人もこうやって紋切を楽しんでいたのでしょうね。

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大人に聞くと、小さいころ幼稚園などで紋切をされていた経験がある方もいました。
正方形の紙と切る道具があれば、これで家でも楽しめます。
他の種類の紙で試してみるのも良いかもしれません。
また家でもぜひ挑戦してみてくださいね。

 

 

☆ちょこっと体講座 日本画編のおしらせ☆

10月12日~10月16日に静岡県立美術館のエントランスでちょこっと体験という15分間の無料体験講座が行われます。
お申込み・参加料金は不要で、墨や箔の簡単な体験をしていただけます。
日本画が展示されている「徳川の平和」とあわせて、ぜひご参加ください♪
詳細はこちらをご覧ください。

 

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美術館の独り言

9/12-13創作週間SP「模写」 

実技室プログラムのご案内です。

12日(土)と13日(日)、2日間にわたって、創作週間スペシャル「模写」が開催されました。
講師は創作週間にも来ていただいている、日本画家の日下文(くさかあや)先生です。

今回の模写の講座では「富士山―信仰と芸術―」展出品の、伝雪舟筆《富士三保清見寺図》(永青文庫蔵)などを展示室で鑑賞した後、曽我蕭白筆《富士三保清見寺図》の模写を、「上げ写し」という技法で体験していただきました。

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この伝雪舟筆《富士三保清見寺図》は、富士山の名画として、多くの絵師に模写されてきました。

模写と言っても、トレーシングペーパーで写すというようなものではなく、薄美濃紙(描く紙)を棒に巻きつけて転がしながら、下に敷いたお手本を確認して描いていくというものです。

blog2?転がして紙を巻きつけて下の絵を確認

blog3巻き戻して描写

この「上げ写し」、元の作品の筆遣いを追うことでその精神性や本質を理解することができるため、
古来より日本画の基礎として用いられてきました。
開催中の「富士山」展では、他の模写作品も数点出品されています。

今回の講座では、「富士山」展を担当された上席学芸員の石上さん(中央)の解説と共に観覧するところから始まりました。

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富士山を描く際の富士山・三保・清見寺という組み合わせの定型を作った、伝雪舟の作品から
定型を継承している他の作品を中心にして鑑賞していきました。

実技室に戻って、さっそく模写に移ります。

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薄美濃紙が透けているので、そのまま写せそうに見えますが、
実際にやってみるとなかなか筆致が合いません…
?松の葉をどの向きから描いたのかなど、推測しながら作者の筆遣いを追います。
模写しようと思わなければ気づかないような細部が見えてきます。

長時間にわたる制作でしたが、休憩をはさみながら皆さん集中して取り組まれていました。

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静寂な実技室内、墨の良い香りが充満しています。

画面が完成したら、水で和紙を湿らせて、裂いて切り離します。(喰い裂き)
簡単にキレイに裂ける和紙の性質に驚かされました!blog3

そして最後に、裏打ち(?薄い紙や絹を裏から別の紙で補強すること)をします。

紙と紙を接着する際に使う麩糊(ふのり)は、粉から作りました。
この麩糊は、伝統的で文化財の修復に欠かせない接着剤です。

小麦粉から抽出した澱粉が原料になっているからか、なんだか料理の雰囲気が漂います。

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お湯で溶かしたり、裏ごししたり、練ったりなど…いくつかの作業工程を経て完成です。

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撹拌の仕方や湯の温度といった少しの加減で出来上がりが左右される、繊細な作業でした。

 

この麩糊を使って、いざ裏打ちの作業へ。

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?糊をつけた裏打ち用の紙を、湿した作品の裏に貼り付けます。

 

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?皆さん皺の無い、キレイな仕上がりでした。

 

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パネルに貼り付けて、完成です!
乾いたら、出っ張っている紙からペリッとはがします。

模写をすると、筆遣いの練習になりますが、当時の作家や人々の暮らし、景色に思いを馳せながらじっくりと鑑賞できました。
これまでの模写をしてきた作家を含む、昔の人々の視点を共有できたように思えます。

静岡県立美術館では、美術館で作品を見るだけでなく、描いてみたい、作ってみたい!という方に
創作活動の場所として「創作週間」中に、実技室を開放して、様々な道具をお使いいただいています。
日本画、木版画、銅版画、リトグラフにはインストラクター在室日を設けており、専門的なアドバイスを受けることができます。
ご興味のある方はぜひ一度見学にお越しください。

日程等、詳しくはこちらをご覧ください。

 

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次回の日本画関連の講座は、実技講座「金箔貼り」です。
来月10月の3日(土)4日(日)、2日間の講座になります。
初心者の方も、安心してお越しください!
お申込み方法・詳細はこちらをご覧ください。

 

 

 

美術館の独り言

お花見日和♪

 

今年は例年より早く桜の開花宣言が出され、県立美術館周辺でも桜が見ごろを迎えています。
特に今日は雲一つない快晴で風もほとんどなく、絶好のお花見日和となりました。

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上の写真は、美術館のバス停から入った道路脇の桜の様子で、どの木も既にほぼ満開に近い状態です。

 

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この道路は一般車両通行禁止の道路ですが、道なりに歩いて行くと左手にロダン館が見えてきます。
その南側斜面にはソメイヨシノが今が盛りと咲き誇っています。

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ロダン館の前を通り過ぎてさらに道路を進むと、左側(公衆トイレ前)の斜面にも大きなソメイヨシノが植えられています。淡いピンク色の花弁が背景の青空に映え、見事なコントラストを見せてくれています。

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さらに県立大学方向に進んで行くと、つい先日植えられたハナミズキの一群が見えてきます。このハナミズキは、日米桜寄贈100周年事業の一環で贈られたもので、県立美術館周辺の敷地に計30本が贈られました。そのうち15本がこの芝生斜面に植樹されています。まだ苗木のため、1本ずつ支柱がつけられています。

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今日は絶好の日和で、あちらこちらでお花見の団体が見られました。そんな中、中央図書館南側の芝生広場に見覚えのあるお花見の一団が…。
よく見ると、当館のミューズスタッフさんたちです。今日は月曜日の休館日。現役、OGお子様も入り混じって仲良くお花見を楽しんでいました。

今年のお花見は今が旬です。皆様も是非、県立美術館周辺のお花見にお出掛けくださいね。

 

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3/20・21・22 「ART+ 美術館でことばと出会う3日間」

3/20~22に「ART+ 美術館でことばと出会う3日間」が開催されました。
ART+(アートプラス)は、高校生、大学生、専門学校生を対象にしたプログラムです。普段は学校以外の時間も部活や塾と忙しく、美術館に訪れる機会がなかなか得られない学生さんたちですが、この3日間は毎日美術館に通い、作品とゆっくり、じっくり向き合っていただきました。「ART+ 美術館でことばと出会う3日間」というタイトルの通り、美術館で「作品」と向き合い、その印象や感想を自分の「言葉」で表現するという趣旨のプログラムですが、最終的には、参加者の言葉を来館者に閲覧可能なガイドブックに仕上げることを目標としました。
講座には、静岡県立清水南高等学校・芸術科の生徒さんたちに多くご参加いただきました。偶然にも、参加された大学生の方も同校出身、そしてブログを書いている私も同じ出身…ということで、南高生づくしの3日間となりました。

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【1日目】
1日目の午前中は、アートカードを用いて言葉のウォーミングアップをするゲームを行いました。静岡県立美術館の所蔵品が48枚セットになったアートカードは、作品の知識がなくても、ヴィジュアルでゲームを楽しむことができます。「名探偵ゲーム」「お話をつくろう」「展覧会をつくろう」といったゲームを行うなか、皆さん自然と、作品について楽しく語っている様子が見られました。
午後は、このプログラムを担当した学芸員とともに展示室に向かい、収蔵品展「人を描く」(3/3~3/31)を鑑賞をしました。中世から近代までの作品を取り上げ、日本の人物画の色々な表現が見られる展示を前にして、芸術科の学生さん方は興味深々でした。この最初の鑑賞で、興味を持った作品をひとつ選び、まずは自由にスケッチしたり、自分の感想を書き留めていきました。つぎに、みんながどんなことを考えているのか、選んだ作品を前にして、自分の思ったことや気づいた点を発表し、共有しました。皆さんの発表に対して学芸員が丁寧にコメントし、そのやりとりや内容がとても新鮮で、知らぬ間に一般のお客さまも集まり、耳を傾けていました。
みんなの意見と感想を共有した後、実技室に戻って執筆作業にかかりました。普段、絵筆の扱いは慣れている皆さんですが、作品を「言葉」で描写する、ということには不慣れなようで、悪戦苦闘している様子も見られました。それでもさすがは芸術科の生徒さん、作品の構図の妙や筆使いの面白さ、といった技法に関する表現はすらすらと記述されていました。
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【2日目】
2日目の朝は、ちょっと気持ちをリラックスしてもらうために、アートカードを用いたジェスチャーゲームを行いました。実技室助手考案のむちゃぶりゲームでしたが、≪考える人≫から真っ黒な抽象画まで、すごいジェスチャーが繰り広げられ、おおいに盛り上がりました。
気持ちもほぐれたところで再び展示室へと足を運び、他の仲間が選んだ作品を一点一点、丁寧に鑑賞しました。同じ作品を見ても、自分の印象と他人の印象、気が付く点はれぞれに異なります。そういった視点の違いも共有するために、意見交換シートを用いて、個々の意見に全員がコメントを書き入れました。午後からは、自分の言葉とみんなの言葉を参考に、ガイド執筆のための原稿作りにかかりました。

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【3日目】
3日目の朝、担当学芸員から、赤ペンの入った原稿が各々に手渡されました…。(自由に思ったことを書いていいって言ったじゃん。ここ直されちゃうの??)そう思った人もきっといたはずです。美術館に展示されている作品の中には、個人蔵のものも含まれます。自分ではとても面白い表現で書けたと思っても、その作品を大切にしている人がそれをどう捉えるかはわかりません。美術館に置くガイドを執筆するためには、色々と気をつけなくてはならないこともあるのですね。
推敲に推敲を重ね、いよいよ本番の紙へ執筆。パソコンは使わず、手書きで丁寧に仕上げます。余白に作品画像を貼りつけたり、イラストを添えたり、デザインコースの生徒さんはレタリングまでしてくださいました。この辺りのセンスの良さと手の速さは、さすが芸術科!といった感じでした。
文章も紙面のデザインも、それぞれの個性が反映された素晴らしいガイドに仕上がりました。さいごに皆さんに3日間の感想をうかがったところ、「こんなに時間をかけてひとつの作品を見たのははじめてで、とても貴重な経験になった」、「美術館という場所のイメージが今までと変わった」、「言葉にすることで色々なことに気が付けた。これからも時間をかけて作品を見るようにしたい」、「いつもは制作中心で、絵を見る機会があまりなかったけど、作品を制作していくうえでも重要な気づきがたくさん得られた」等々、私たちスタッフにとっても嬉しい言葉をたくさんいただきました。今回制作した作品ガイドは、展示会場(収蔵品展「人を描く」)にて閲覧可能です。ぜひ、手に取って、作品とともにご覧ください!

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