2015年09月15日(火) 美術館の独り言
実技室プログラムのご案内です。
12日(土)と13日(日)、2日間にわたって、創作週間スペシャル「模写」が開催されました。
講師は創作週間にも来ていただいている、日本画家の日下文(くさかあや)先生です。
今回の模写の講座では「富士山―信仰と芸術―」展出品の、伝雪舟筆《富士三保清見寺図》(永青文庫蔵)などを展示室で鑑賞した後、曽我蕭白筆《富士三保清見寺図》の模写を、「上げ写し」という技法で体験していただきました。
この伝雪舟筆《富士三保清見寺図》は、富士山の名画として、多くの絵師に模写されてきました。
模写と言っても、トレーシングペーパーで写すというようなものではなく、薄美濃紙(描く紙)を棒に巻きつけて転がしながら、下に敷いたお手本を確認して描いていくというものです。
この「上げ写し」、元の作品の筆遣いを追うことでその精神性や本質を理解することができるため、
古来より日本画の基礎として用いられてきました。
開催中の「富士山」展では、他の模写作品も数点出品されています。
今回の講座では、「富士山」展を担当された上席学芸員の石上さん(中央)の解説と共に観覧するところから始まりました。
富士山を描く際の富士山・三保・清見寺という組み合わせの定型を作った、伝雪舟の作品から
定型を継承している他の作品を中心にして鑑賞していきました。
実技室に戻って、さっそく模写に移ります。
薄美濃紙が透けているので、そのまま写せそうに見えますが、
実際にやってみるとなかなか筆致が合いません…
?松の葉をどの向きから描いたのかなど、推測しながら作者の筆遣いを追います。
模写しようと思わなければ気づかないような細部が見えてきます。
長時間にわたる制作でしたが、休憩をはさみながら皆さん集中して取り組まれていました。
画面が完成したら、水で和紙を湿らせて、裂いて切り離します。(喰い裂き)
簡単にキレイに裂ける和紙の性質に驚かされました!
そして最後に、裏打ち(?薄い紙や絹を裏から別の紙で補強すること)をします。
紙と紙を接着する際に使う麩糊(ふのり)は、粉から作りました。
この麩糊は、伝統的で文化財の修復に欠かせない接着剤です。
小麦粉から抽出した澱粉が原料になっているからか、なんだか料理の雰囲気が漂います。
お湯で溶かしたり、裏ごししたり、練ったりなど…いくつかの作業工程を経て完成です。
撹拌の仕方や湯の温度といった少しの加減で出来上がりが左右される、繊細な作業でした。
この麩糊を使って、いざ裏打ちの作業へ。
?糊をつけた裏打ち用の紙を、湿した作品の裏に貼り付けます。
?皆さん皺の無い、キレイな仕上がりでした。
パネルに貼り付けて、完成です!
乾いたら、出っ張っている紙からペリッとはがします。
模写をすると、筆遣いの練習になりますが、当時の作家や人々の暮らし、景色に思いを馳せながらじっくりと鑑賞できました。
これまでの模写をしてきた作家を含む、昔の人々の視点を共有できたように思えます。
静岡県立美術館では、美術館で作品を見るだけでなく、描いてみたい、作ってみたい!という方に
創作活動の場所として「創作週間」中に、実技室を開放して、様々な道具をお使いいただいています。
日本画、木版画、銅版画、リトグラフにはインストラクター在室日を設けており、専門的なアドバイスを受けることができます。
ご興味のある方はぜひ一度見学にお越しください。
日程等、詳しくはこちらをご覧ください。
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次回の日本画関連の講座は、実技講座「金箔貼り」です。
来月10月の3日(土)4日(日)、2日間の講座になります。
初心者の方も、安心してお越しください!
お申込み方法・詳細はこちらをご覧ください。