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5/25 わくわくアトリエ アルパカの毛で作るアルパカブローチ

「古代アンデス文明展」関連講座として、アルパカの毛を使用してアルパカのブローチを作る講座が開催されました。アルパカは、古くからアンデス地域の人々の生活に深く関わってきた動物です。今回行われた講座では、そのアルパカの本物の毛を使用し、アルパカの姿のもこもことした可愛らしいブローチ作りに挑戦しました。(下に掲載の写真は講師による参考作品です)

 

 

今回の講座で講師を担当して下さったのは、SBS学苑(パルシェ校・遠鉄校)や、暮らしの学校(愛知県岡崎市)で羊毛フェルト教室の講師をされている大村智子先生。羊毛を使い、まるで本物のようにふわふわとした、可愛らしい犬や猫のフェルト作品などを制作されています。講座の最初のご挨拶では、大村先生ご自身で制作された、可愛い猫の顔のブローチを胸に付けて登場されました。

 

 
ブローチの制作を始める前に、当館学芸員で「古代アンデス文明展」の担当学芸員である浦澤さんより、アンデス文明についてや、アルパカとの関連性についてご説明をいただきました。「古代アンデス文明展」では、アルパカと同じラクダ科の動物であるリャマを表現した土製のリャマ像や、リャマらしきラクダ科の動物が描かれた土製の皿などが展示されています。アンデスではリャマやアルパカは家畜として輸送手段のほか、毛や皮、肉や骨まで余すことなく利用され、生活する人々にとって大変重要な存在だったそうです。


 

講座が開催された当日は、同じく「古代アンデス文明展」関連イベントとして本物のアルパカが美術館に来館しました。講座の参加者の皆さんと共にアルパカの見学・観察会を行い、写真を撮ったりスケッチをしたりしながらアルパカについて学びました。飼育員さんよりアルパカの紹介や生態についての説明があり、参加者からも質問が飛び交うなどして盛り上がりました。来館したアルパカは5月上旬に頭部より下の毛を刈ったそうで涼しそうな様子でしたが、本来アルパカの生息しているアンデス山脈は標高が高く乾燥した場所で、気温も湿度も高い日本の夏の気候は、寒さに強いアルパカにとっては少々厳しい環境だそうです。そんなアルパカの毛は、アンデスでは衣類の材料としても重宝されたそうです。

 

 

アルパカの見学・観察会を終え、ブローチ制作が始まりました。用意された材料の毛は、羊の毛とアルパカの毛の2種類あり、参加者はその感触の違いを興味深そうに確かめていました。羊毛よりアルパカの毛の方が手触りは滑らかで、高級品だそうです。

次に、先生より羊毛フェルトの制作で使用する道具の使い方について説明がありました。制作を進める上で一番重要となる道具は、ニードルです。このニードルの先端には小さなギザギザとした部分があり、それを何度も毛に突き刺すことによって、毛と毛が少しずつ絡み合い固めていくことができます。先が鋭く尖っているので使用する時は十分に気を付け、使わない時は必ず用意されたスポンジに刺しておくなど、使用時の注意事項が説明されました。


 

今回の講座では、参加者の方に一から制作をしていただくのではなく、大村先生にアルパカの大まかな形を作る工程までを事前にご制作・ご用意していただきました。ここまでの作業で、参加者1人分につき約50分もかかったそうです。そんな先生の心のこもったブローチのベースを元に、先ず初めにアルパカの目のパーツを、目打ちと木工用ボンドを使って付けていきます。

 

 

制作の様子を温かく見守る大村先生。今回は親子で参加された方も多かったです。大変分かりやすくご指導をしていただき、小さなお子様や初めての方も楽しみながら制作を進めているようでした。

アルパカの目のパーツを付け終えたら、次はいよいよニードルを使い、焦げ茶色の羊毛で鼻と口を表現していきます。ニードルは上から真っ直ぐ刺し、引き抜くときも真っ直ぐ上に引き抜くのが正しい使い方だそうです。最初は同じベースだったアルパカも、作る人によって表情は様々。徐々に個性が感じられるようになってきました。

 

 

顔のパーツが完成したら、次は耳を作っていきます。耳には白い羊毛を使います。耳の大きさに丁度良い量の羊毛を手でちぎり、両手の中で転がすように丸めていきます。その時に、アルパカの耳の形を頭に思い浮かべながら丸めていくと良いそうです。大体アルパカの耳の形に固まってきたら、ニードルで刺してアルパカの頭の上にしっかりとくっ付けます。

両耳が付いたら、ここでいよいよアルパカの毛の登場です。束になっている毛を少しずつちぎって丸めたものをアルパカの身体全体にくっ付け、もこもこの毛並みを表現していきます。

 

 

ここまで出来たら、アルパカの姿の完成です。土台のオレンジ色のフェルトを完成したアルパカの輪郭に合わせてカットし、アルパカの首に綺麗なビーズのネックレスをくぐらせます。更にもう1枚厚手のフェルトを裏側から貼り付け、最後にブローチのピンをボンドで貼り付けたら、アルパカブローチの完成です!

 

 

講座の最後に、完成したアルパカブローチを並べて鑑賞会を行いました。参加者は、「可愛い!」と嬉しそうな様子で自分の作った作品や他の方の作品を眺めたり、写真を撮ったりして楽しんでいました。大村先生が事前に制作を進めてくださったお蔭で、約1時間45分で参加者全員が完成させることが出来ました。大村先生も、作品が完成した時の皆さんのそんな笑顔を見ると、1人分約50分かかった準備の苦労も吹き飛んでしまうと、笑顔でおっしゃっていました。

 


にっこり笑ったアルパカやハートの模様が付いたアルパカ、大胆に翼を生やしたアルパカなど、本当に個性豊かなアルパカブローチが完成しました。貴重なアルパカの毛で出来た世界に一つだけのアルパカブローチ、ぜひ大切に使ってくださいね!