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2/1・2/2 実技講座「水彩で描く 風景画の世界を旅する講座」

 

 

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2月1日(土)・2月2日(日)の2日間、収蔵品展「西洋の風景画」関連講座として、「水彩で描く 風景画の世界を旅する講座」が開催されました。皆様は「風景画」と聞くと、どのようなイメージを持たれるでしょうか?山や川や街が描かれていたり、その中に樹木や建造物や人々が描かれていたり…風景画のモチーフとして想像出来るものは、私たちの身近な所に広がっているのではないかと思います。今回は風景画の展覧会を鑑賞した後に、私たちにとって身近な画材の一つである水彩絵の具を使って、静岡県立美術館周辺の風景を描きました。1日完結の講座として、2日間で計20名以上の方にご参加いただきました。

 

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今回は「西洋の風景画」関連講座ということで、初めに収蔵品展「西洋の風景画」の鑑賞が行われました。今回の展示では、静岡県立美術館が数多く収蔵している風景画作品の中から、17世紀以降の西洋の風景画が展示されました。作品のご解説をしていただきましたのは、今回の展覧会をご担当された、当館学芸員の新田さんです。

西洋の風景画は一体どのように描かれているのでしょうか?今回はその風景表現に焦点を当てて解説をしていただきました。1630年代後半に描かれたとされる、クロード・ロランの風景画≪笛を吹く人物のいる牧歌的風景≫の例では、中央の大きな木と、その下に集まる人々や手前で草を食む家畜の姿が最初に目に飛び込んで来ます。そのままじっくり見ていると、その周囲の草原の様子や後ろにある建物なども見えてきます。更によく見ていくと、遥か後方に遠くの山の景色などが描かれていることに気が付きます。このように、風景画の構図は大きく3つに分けることができ、作者の意図で見る人の目が自然と誘導されるように描かれているそうです。

 

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今回の展覧会では、パウル・クレーによる不思議な風景画作品も展示されました。パウル・クレーの≪ホールC.エントランスR2≫という作品は、建物やその柱のような物が描かれていますが、その遊びのある空間表現が非常に独特とのことです。色彩と格子で表現された世界は、見る人によって空間を様々に捉えることができます。このように、風景表現は作品によって様々なようですが、全体を通して「作者が自分の見せたいように作品を作っている」と言えるそうです。参加者の方は時々質問なども挟みながら、学芸員の新田さんの解説を大変興味深そうに聞いていらっしゃいました。

 

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鑑賞後は実技室に戻り、今回講師としてお越しいただいた好宮佐知子さんより、自己紹介をしていただきました。また、スライドを使ってこれまで制作された風景画の作品などもご紹介いただきました。

 

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好宮さんは、普段日常の中で目にした光景を記憶を頼りに描かれているそうで、水彩絵具、水彩ガッシュの他、フレスコによる風景の作品などを制作されているそうです。窓をテーマにした作品も数多く制作されており、柔らかい光の表現や、優しいタッチで描かれた作品の数々がとても印象的でした。好宮さんはご自身の作品を紹介しながら、今回は気になった光景や美しいと思った風景を、自分の素直な感覚と向き合いながら描いてみてほしいとお話しされました。

 

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好宮さんによるご紹介の後は、スケッチ用紙と鉛筆を手に風景のスケッチへ出発です!幸い2日間とも好天に恵まれ、外でスケッチをすることができました。美術館のエントランスを出てすぐの広場では、さっそく美術館からの眺めを描いている方がたくさんいらっしゃいました。普段見慣れているはずの光景も、改めてよく観察してみると、新しい魅力に出会うことができます。

 

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美術館の2階入り口へと続く外階段からの眺めをスケッチしている方も多くいらっしゃいました。好宮さんもご一緒に美術館周辺を散策しながら、参加者の方にお声掛けをして回りました。景色の中で気になった部分をクローズアップして見てみると…曲がりくねった木の枝や水面の揺らめき…そんな光景も、いつもより面白く見えてくるかもしれません。

 

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移動しながら色々な風景を描いて回っている方や、一か所に留まってじっくり描いている方まで様々です。特に2日目の日曜日は美術館周辺の人の往来が多く、それも風景の一部としてスケッチしている方が多かったです。また、静岡県立美術館の周りは自然が多く、運が良ければ野鳥や動物に出会うこともあります。タイミング次第では、そんな偶然の出会いを風景画の中に描くのも楽しいですね。

 

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移動範囲に特に制限はないので、プロムナードの入口付近や芝生広場、更に下った所にあるお店の近くまでスケッチに出かけた方もいらっしゃいました。予め何となく描きたい風景をイメージされて来た方も多かったようです。

 

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お昼休憩を挟み、午後からは実技室で風景画制作のスタートです。今回は、画用紙の水張りの必要がないイラストレーションボード(F4サイズ)に描きます。水彩絵の具の中にもいくつか種類がありますが、今回は不透明水彩、透明水彩、そしてその中間程度と言われるサクラマット水彩などを使って描いていただきました。不透明水彩は、下の色の上から別の色を重ねて描いていく事が得意な絵の具です。一方透明水彩は、色を重ねても下の色は透けて見えるのが特徴です。

 

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スケッチを元に、鉛筆で軽く下描きをしてから水彩で描いていきます。参加者の方の制作を見守りながら、講師の好宮さんがお一人ずつ、丁寧にアドバイスをして回られていました。

 

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画材に慣れている方はどんどん描き進めていました。今回、水彩絵の具はそれぞれご持参いただきましたので、参加者によって絵の具の質感も少しずつ異なっているように感じました。

 

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「西洋の風景画」展鑑賞時の解説で、見せたい部分は細かく描き込み、そうでない部分はあっさりと描いている…という説明がありました。絵の中のどの部分を自分が見せたいかによって、描き込む必要のある部分も変化します。

 

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実際の風景をそのまま描いてみたり、組み合わせてみたり、色だけアレンジしてみたり…皆様それぞれの「描きたい!」が風景画の作品に表れていました。

 

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約3時間の制作時間で、素敵な風景画が完成しました!講座の最後に、全員の方の作品を並べて、感想会を行いました。すべて静岡県立美術館周辺の風景がモチーフとなっていますが、どこを描いた作品か分かるでしょうか?外の風景だけでなく、美術館の中にある風景を描いた方もいらっしゃいました。

 

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ずっと気になっていた美術館の作品を描いたという方も。

 

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木の表現を見比べてみても、筆のタッチがそれぞれ違っていて味わい深いです。

 

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水彩の柔らかい濃淡が、風景画の中に空気間を生み出していますね。

 

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2日間とも、プロムナードの並木の景色を選んで描いている方が多めでした。「西洋の風景画」展の中に、ジャン=バティスト・カミーユ・コローによる≪メリ街道、ラ・フェルテ=ス=ジュアール付近≫という道を描いた作品が出品されましたが、画面の奥へと続く道の表現が、どこかその雰囲気に似ているようにも感じられます。

 

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構図にもそれぞれの「描きたい!」が詰まっています。同じ景色でも、他の人の目を通して見てみると、全く違って見えているのがとても面白いです。

 

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今まで風景画についてよく知らなかったという方も、描いた経験のある方も、今回の講座で更に風景画に対する知識を深めていただけたのではないでしょうか?また、今回講師をご担当いただいた好宮さんには、講座終了まで大変丁寧にご指導をしていただきました。2日間ご指導いただき、本当にありがとうございました!

静岡県立美術館では、風景画の収集を一つの方針に、作品を数多くコレクションしております。風景画の展覧会の際には是非また足を運んでいただき、風景画の世界を楽しんでいただけましたら幸いです。