美術館の独り言

3/20・21・22 「ART+ 美術館でことばと出会う3日間」

3/20~22に「ART+ 美術館でことばと出会う3日間」が開催されました。
ART+(アートプラス)は、高校生、大学生、専門学校生を対象にしたプログラムです。普段は学校以外の時間も部活や塾と忙しく、美術館に訪れる機会がなかなか得られない学生さんたちですが、この3日間は毎日美術館に通い、作品とゆっくり、じっくり向き合っていただきました。「ART+ 美術館でことばと出会う3日間」というタイトルの通り、美術館で「作品」と向き合い、その印象や感想を自分の「言葉」で表現するという趣旨のプログラムですが、最終的には、参加者の言葉を来館者に閲覧可能なガイドブックに仕上げることを目標としました。
講座には、静岡県立清水南高等学校・芸術科の生徒さんたちに多くご参加いただきました。偶然にも、参加された大学生の方も同校出身、そしてブログを書いている私も同じ出身…ということで、南高生づくしの3日間となりました。

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【1日目】
1日目の午前中は、アートカードを用いて言葉のウォーミングアップをするゲームを行いました。静岡県立美術館の所蔵品が48枚セットになったアートカードは、作品の知識がなくても、ヴィジュアルでゲームを楽しむことができます。「名探偵ゲーム」「お話をつくろう」「展覧会をつくろう」といったゲームを行うなか、皆さん自然と、作品について楽しく語っている様子が見られました。
午後は、このプログラムを担当した学芸員とともに展示室に向かい、収蔵品展「人を描く」(3/3~3/31)を鑑賞をしました。中世から近代までの作品を取り上げ、日本の人物画の色々な表現が見られる展示を前にして、芸術科の学生さん方は興味深々でした。この最初の鑑賞で、興味を持った作品をひとつ選び、まずは自由にスケッチしたり、自分の感想を書き留めていきました。つぎに、みんながどんなことを考えているのか、選んだ作品を前にして、自分の思ったことや気づいた点を発表し、共有しました。皆さんの発表に対して学芸員が丁寧にコメントし、そのやりとりや内容がとても新鮮で、知らぬ間に一般のお客さまも集まり、耳を傾けていました。
みんなの意見と感想を共有した後、実技室に戻って執筆作業にかかりました。普段、絵筆の扱いは慣れている皆さんですが、作品を「言葉」で描写する、ということには不慣れなようで、悪戦苦闘している様子も見られました。それでもさすがは芸術科の生徒さん、作品の構図の妙や筆使いの面白さ、といった技法に関する表現はすらすらと記述されていました。
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【2日目】
2日目の朝は、ちょっと気持ちをリラックスしてもらうために、アートカードを用いたジェスチャーゲームを行いました。実技室助手考案のむちゃぶりゲームでしたが、≪考える人≫から真っ黒な抽象画まで、すごいジェスチャーが繰り広げられ、おおいに盛り上がりました。
気持ちもほぐれたところで再び展示室へと足を運び、他の仲間が選んだ作品を一点一点、丁寧に鑑賞しました。同じ作品を見ても、自分の印象と他人の印象、気が付く点はれぞれに異なります。そういった視点の違いも共有するために、意見交換シートを用いて、個々の意見に全員がコメントを書き入れました。午後からは、自分の言葉とみんなの言葉を参考に、ガイド執筆のための原稿作りにかかりました。

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【3日目】
3日目の朝、担当学芸員から、赤ペンの入った原稿が各々に手渡されました…。(自由に思ったことを書いていいって言ったじゃん。ここ直されちゃうの??)そう思った人もきっといたはずです。美術館に展示されている作品の中には、個人蔵のものも含まれます。自分ではとても面白い表現で書けたと思っても、その作品を大切にしている人がそれをどう捉えるかはわかりません。美術館に置くガイドを執筆するためには、色々と気をつけなくてはならないこともあるのですね。
推敲に推敲を重ね、いよいよ本番の紙へ執筆。パソコンは使わず、手書きで丁寧に仕上げます。余白に作品画像を貼りつけたり、イラストを添えたり、デザインコースの生徒さんはレタリングまでしてくださいました。この辺りのセンスの良さと手の速さは、さすが芸術科!といった感じでした。
文章も紙面のデザインも、それぞれの個性が反映された素晴らしいガイドに仕上がりました。さいごに皆さんに3日間の感想をうかがったところ、「こんなに時間をかけてひとつの作品を見たのははじめてで、とても貴重な経験になった」、「美術館という場所のイメージが今までと変わった」、「言葉にすることで色々なことに気が付けた。これからも時間をかけて作品を見るようにしたい」、「いつもは制作中心で、絵を見る機会があまりなかったけど、作品を制作していくうえでも重要な気づきがたくさん得られた」等々、私たちスタッフにとっても嬉しい言葉をたくさんいただきました。今回制作した作品ガイドは、展示会場(収蔵品展「人を描く」)にて閲覧可能です。ぜひ、手に取って、作品とともにご覧ください!

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