作れちゃう

8/11-14 夏休み子どもワークショップ 「うちの子もデザイナー!」

実技室プログラムのご案内です。
8/11-14にかけて「スイスデザイン展」関連企画、夏休み子どもワークショップ「うちの子もデザイナー!」が開催されました。この企画は、「スイスデザイン展」が静岡県立美術館初のデザイン展ということもあり、この貴重な機会に、子どもたちにも「デザインする」という行為に親しんでもらいたいという想いから実現しました。
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ワークショップは、パート1,2と2日間ずつ行われ、パート1に池ヶ谷知宏さん(goodbymarket)、パート2に岡本光市さん(共栄デザイン)を講師に迎えました。お二人とも静岡在住で、日本国内や海外でもご活躍されているデザイナーです。それではパート1、2それぞれのワークショップの様子をご紹介したいと思います。


パート1「これでいいのだ!やわらか発想ラボ」

パート1では、このタイトルの通り、デザインするうえでとても大切な「アイデアを生み出す」という行為を、子どもたちに体験してもらいました。とはいえ対象は小学生です。デザインという言葉も知らなければ、もちろんその行為が何であるのかも分かりません。この日のために池ヶ谷さんが用意して下さった、一風変わったユニークな実験をいくつか行う中で、子どもたちが自然と「デザイン」のためのアイデアやひらめき、発想を感じとれるようになるのが狙いです。
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①シルエットから想像する。
はじめに、自分の名前の文字を探して名札をつくるゲームを行いました。ひらがなの50音が1枚ずつカットされた文字…ん??でもこの文字なんだか変ですね。そうなんです。ひらがなの輪郭がもの凄く太っていて、いつも見ている文字とは全然違った形に加工されています。最初は見つけるのにもひと苦労でしたが、みんないつの間にかすらすら読めるようになっていました。見慣れているものを見慣れない形に置き換えてみる、これもデザインの発想のひとつですね。
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②デザインに触れる。
午後は、「スイスデザイン展」を鑑賞しました。会場には、ネフ社のカラフルな積木があったり、ル・コルビジェのふわふわ毛皮の素敵な椅子があったりで、低学年の子どもたちにとっては、触りたい気持ちとの戦いのようでしたが、各々、自分なりの興味を持って観察している様子でした。鑑賞の後、館内のチラシ置き場に向かい、子ども目線でぴんときたチラシを1枚ピックアップしてもらいました。こちらは池ヶ谷さんが回収し、統計をとり、後日みんなの目線がどんなものだったか発表してくれました。
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③富士山に見立てる視点をつくる。
1日目の最後は、各自お手製の富士山ルーペを持ち、昆虫採集ならぬ「富士山採集」に出かけました。富士山型に切り取ったルーペの穴から、富士山っぽい色合わせやテクスチャーを探し出し、写真に収めます。講師の池ヶ谷さんは富士山グッズのデザインで有名な方です。果たして池ヶ谷さんも納得のかっこいい富士山を見つけ出すことが出来たのでしょうか?
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2日目は、前日ピックアップしたチラシの統計報告と、富士山採集の写真発表から始まりました。なんだかデザイン会社のプレゼンみたいですね…。子どもたちの目線で選んだチラシについて、ひとりひとりにその訳を発表してもらいました。大人とは違った視点でとてもユニークでした。例えば渦巻デザインのチラシを手に持ってぐるぐる回すと、友達の目を回すことが出来る…とか。
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富士山採集は1時間弱の短い時間でしたが、想像以上にたくさんの富士山が発見されていました。誰かの洋服から見つけた白と水色の富士山、道路のセンターラインが境界線になった富士山、ポストの赤富士…などなど、普段は見えないはずの景色から、みんなの知っている富士山を見つけ出しました。ちょっとした発想の転換で、自分の心の中の富士山を表現することが出来るのですね。これはまさにデザインのアイデアの源です。
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④「言葉で伝える」を考える。
つぎに、ロダン館のブリッジギャラリーの作品を鑑賞し、その形状や雰囲気からタイトルを想像し、命名するという遊びを行いました。たしかに、言葉で何かを簡潔に表すという行為は、デザインの中でも、広告のキャッチコピーやロゴに関わる、大切な要素のひとつですね。驚くようなタイトルがたくさん飛び出しました。
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⑤漢字の新たな視点をつくる
午後は、池ヶ谷さん自身が行っている漢字のアートワークなぞるかたちで、漢字を使ったいくつかの実験を行いました。はじめに、自分の名前の漢字で人の顔をつくるという遊びをしました。顔になりそうな自分の名前の漢字を一文字選んで、池ヶ谷さんが用意した人型カードに当てはめてみると…あら不思議、本当に顔っぽく見えてきました。
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そして最後に、実技室が池ヶ谷病院に早変わり、漢字の解剖&手術を行いました。つくりの中に×(バツ)という部首や部分が含まれる漢字(患者)を見つけ出し、○(マル)に変えて、読み方(意味)も自分で考え、治療してしまおうというわけです。この実験は子どもたちには難しいかと思われたのですが、全員漢和辞典を手にすごい勢いで患者を見つけ出し、治療に当たっていました。私のなかの大ヒットは、「本」の「十」(×の部分)を○に変えて、「マンガ」と読ませた作品です。子どもらしくて秀逸です!最後に池ヶ谷委員長に「完治印」をもらい無事に退院しました。
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2日間、池ヶ谷さんのワークショップを通じて、普段見慣れているものからたくさんの驚きとアイデアを発見できました。いつか子どもたちが大人になった時、この経験を思い出して、色々な視点、発想、工夫して楽しむ心を忘れずにいてほしいです。

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パート2「ひらめきハニカムプロジェクト」

パート2では、既存の作品からデザインを学び、自分で実際にモノの形をデザインしてみる体験をしてもらいました。
作り手の立場を経験することで、普段何気なく使っている身近なプロダクトに目を向けるきっかけの場になればという思いがありました。今回は、岡本さんが2006年に発表したハニカム紙を使ったプロダクトを参照して、ペン立てと、花瓶を作りました。

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講座の最初では岡本さんのこれまでの作品を見て、どんなものに使うのかクイズをしました。不思議な形のワイングラス、ポッケのようなものがついた傘立て、プランターと一体になった傘立て、風船のランプ…どうやって使うのか、何のために作ったのか?様々な意見が子どもたちから出ました。そしてハニカム紙で作ったランプの登場です。

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このハニカム紙、一体何かというと、紙が何枚も重なったものが1セットになっており、広げると蜂の巣のような形になる構造になっているものです。七夕の飾りで見たことがあるかもしれませんね。

今回はこのハニカム紙を使って作品を作るので、まずはこの素材を知るために、ハニカム紙を自分で作ってみました。

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ガイドに従いながら、薄い紙を交互に糊で貼り付けていきます。
一見難しそうですが、広げてみると、ちゃんとハニカム構造のシートができていました。
今回は、このハニカム紙を各10枚ずつ使って、ペン立てと花瓶を作ります。

 

午前中の終盤には、「スイスデザイン展」を鑑賞して、どんな人がどのような目的でその製品を作ったのか想像しながら見ていきます。スイスと日本の意外な接点も興味津々の様子でした。(パート1と2では参加者が異なります)

お昼をはさんで、再度スイスデザイン展に足を運び、展示品をヒントに作りたい作品のスケッチをします。

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一つの作品から得たヒントを、角度を変えてもう一つ描いてみるなど、試行錯誤していました。
アルミボトル<SIGG>のプリントや、ポスターのフォントに着目したり、細かい形から着想を得たりして、中には50個近くスケッチしている子も見られました。

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さらに、ロダン館へも足を延ばし、主に人体から花瓶やペン立てになりそうな部分をスケッチしました。
彫刻作品であるロダンの作品、私にとってもデザインの視点で見るのは新鮮でした!

 

次はスケッチを元にしてデザインをつめていきます。岡本さんに相談しながら、単なる形の面白さだけでなく、自立するのかどうか等、構造も含めて考えました。候補の中から、作品として作るものを選りすぐります。katagami
形が決まったらハニカム紙に形を写して、切っていきます。
1ミリのズレが、作品の運命を左右する繊細な作業のため、細かい所まで慎重に切っていきます。今回は小学1年生から参加してくれましたが、慣れないハサミを使いながらも、黙々と集中して取り組んでいる様子が印象的でした。

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10枚を切り終えたらハニカム紙同士を糊で接着します。
早くハニカムを開いて形を見たい気持ちを抑え、糊が乾くまで、重しを乗せて待ちます…。
そして、最後は全員で鑑賞会です。
ここでやっと自分のハニカムを開きます。

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全部並べると、圧巻です!
それぞれ立派な作品を完成させることができました。子どもたちからも「大切にする!」という声を聞くことができ、嬉しく思いました。
完成した作品は、一部を県立美術館にて展示していますので、ぜひご来館ください。(詳細はこちら

私達のまわりにあるモノの形には、理由があります。なぜこの形?なぜこの色?考えるだけでも、暮らしの中のデザインを、もっと楽しめるかもしれませんね。