美術品こぼれ話

《地獄の門》の裏が熱いぜ!

現在、ロダン館では、「やぐらプロジェクト」と「折り紙プロジェクト」が好評開催中です。めったにない機会ですので、お見逃しのないよう、ぜひご覧ください。

そこで、ロダンの彫刻についてのこぼれ話を。今回の企画では、《地獄の門》の裏面をのぞき見ていただけます。

当館の《地獄の門》は、上下2分割で鋳造されたのち、結合して作られています。表側から見るときにはまったくわかりませんが、裏面をのぞいてみると、確かに上下の境と、それをつないでいる太いボルトとナットを見ることができます。

《地獄の門》は重さが約7トンあるといわれていますので、上下それぞれおよそ3.5トンずつの重量ということになり、それらが縦に積み重なっているというわけです。あらためて考えてみると、すごいことです。

この作品は、その名の通り、もともとは大きな門扉として作られたため、高さや幅に比べて奥行きの薄い形、つまり薄っぺらい形体をしています。薄いものを縦に積み重ねて立てるのは至難の業です。ですから、当然ながら作品そのものが自立できるはずはなく、作品の裏側に大小さまざまな支柱や骨材を渡して、建物(ロダン館)に頑丈に固定して、立たせています(今回はその耐震性の支柱なども見ていただけます)。

古来より巨大なものを立てる、積むといった行為は、重力にあらがい、たった2本の足で立ち上がる人の意志の強さを連想させるものです。彫刻や建築にたずさわる者たちは、いつもこのロマンを追い求めているのかもしれません。

今や、《地獄の門》の裏面は、冷たく、ひっそりと静まり返っています。しかし、かつて、7トンの重量物を鋳造し、積んで、つないで、運んで、立てることにたずさわった人たちがいて、その燃え盛るような情熱が、この裏面に込められていたに違いありません。今回、特別に開放している裏面の点検口をのぞきながら、ものを作ること、立てることのエネルギーに思いをはせてみるのも、一興でしょう。