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9/22-23 実技講座 日本画・金箔貼り「扇面に描く」

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「幕末狩野派展」関連講座として、9月22日から二日間連続で扇面画を描く講座が開催されました。本展覧会に出展されている、橋本雅邦《暮山図・鶺鴒図扇面》は、明治38年にセオドア・ルーズベルト大統領夫妻に贈られたと考えられる扇で、外交において重要な役割を果たす贈答品だった可能性が高い作品です。扇というと、現代では、涼を求めてあおぐ夏扇が一般的ですが、時代をさかのぼると、戦の褒美や男女の契りの証として用いられるなど、単にあおぐだけでなく、表現や意思疎通の手段として重要な役割を果たしていたことがわかります。本講座では、そういった扇の用途にも着目した上で、大切な人へ想いを馳せながら「贈る扇」の図案を作成していただきました。

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はじめに、本展覧会を担当している野田麻美学芸員から、展覧会の見どころについてレクチャーを受けました。企画展示室の最後を飾る扇面を囲み、この扇が贈答品として用いられた経緯や、狩野派と扇の関係について話が及ぶと、参加者の方々は興味深そうに扇に見入っていました。俵屋宗達は扇屋だったことで有名ですが、狩野派も、もともとは扇屋として画業をスタートしたそうです。狩野派の系譜につらなりながらも、近代への橋渡しとしての役割を担った橋本雅邦が、最晩年に手がけた扇であったことを知り、感慨深い気持ちになると同時に、扇が人と人を繋ぎ関係性を深める重要な贈答品だったことに、改めて気づかされました。

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実技の講師には、静岡県出身の日本画家、鈴木強先生をお招きしました。鈴木先生の作品は、金箔を用いた吉祥画が多く、当館の講座では日本画や金箔貼りを中心に、10年以上ご指導をいただいています。

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今回の講座では参考作品として、鈴木先生描き下ろしの扇面画を扇子に仕立てたものを用意しました。《波に雀》(左)には金銀砂子が、《昇鯉》(右)にはひび割れたようなテクスチャーの切箔が施されています。自分の描く図案に合わせて、どのように箔を用いるかも腕の見せどころになります。

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鑑賞の後、各々の扇面画制作にかかりました。今回は贅沢にも、展覧会会場の作品をスケッチする時間を設け、図録なども参考に主題となるモチーフを選択し、図案を考えました。

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上の写真の参加者の方は、2羽の鶴を主役に描くことを決めました。扇面というアーチ状の画面を活かし、モチーフをどこに配置するべきか、考えを巡らせます。

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下絵が出来次第、本番用紙へと写していきます。日本画の制作工程では「写す」という作業が度々あります。下絵を描く→下絵をトレーシングペーパーなどの透ける薄紙に写す→写した下絵を転写紙で本番用紙に写す…と、最低でも3回は同じ図案を描くため、どうしても面倒な気持ちになりますが、都度、新鮮な心持ちで取り組むことで、出来栄えも大きく変わります。

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皆さんの下絵が出来上がってきたところで、鈴木先生から、墨、胡粉、水干、膠といった、日本画特有の画材について、扱い方のレクチャーがありました。今回の講座では、扇を仕立てた時に滲みなどが生じないよう、特殊なメディウムも使用しました。

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本番用の図引紙(扇面用紙)に写した下絵を墨で描き起こしていきます。この工程を「骨描き」と呼びます。墨で引いた線は乾くと滲まず、流れませんので、まさに絵の骨格となる線になります。

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上の写真は、当館所蔵品で、本展覧会にも出展されている狩野永岳《富士山登龍図》を参考に描いた図案です。本物は掛幅装で縦長の構図ですが、扇面に合わせて、右に暗雲から現れる龍の頭部と、左に富士を配置しています。扇子を少しずつ開く度に臨場感が増す構図に仕上がっています。

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扇面を池に見立て、蓮と鴨を描いていた方の作品です。右側に白く抜けている蓮の葉には、金箔を施す予定とのことでした。皆さんの着彩の目途が立ったところで、どんな風に箔の意匠を施そうかと思案を巡らせつつ、1日目を終了しました。

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2日目の午前中に、箔を用いた様々な技法のレクチャーを受けました。最初に「砂子撒き」のやり方を教わりました。竹製の筒に金網の張られた「砂子筒」に箔を入れ、固めの刷毛でかき回すと、網目から箔がはらはらと落ちてきました。砂子を撒きたい場所に予め膠を引いておくことで、膠が糊の役目を果たし、箔が画面に付着します。

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上の写真は、金箔を砂子撒きした直後の状態です。まだ箔が立っているのがわかります。この後、膠が半渇きになるまで待ち、あて紙をした上から固いもので箔を押して定着させます。

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つづいて「箔あかし」を教わりました。金箔は非常に薄く、1枚で扱うことが困難です。「あかし紙」という紙に箔を貼りつけた状態にすることで、画面などに施すことが可能になります。箔を上手くあかせるまでにも経験を要するため、この体験の後に、狩野派が手がけた金屏風などを目にすると、技術力の高さに驚愕します。

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画面を金箔で埋め尽くす際には、あかした箔を四角いまま貼り付けますが、今回の講座では、各自の意匠に合わせて箔を貼れるよう、特殊な「箔のり」も用いました。上の写真は、雲の部分に箔のりを塗り、あかした銀箔を貼り付けたところです。ひと通りのレクチャーを受け、各々の図案に最適と思われる技法で箔を施しました。

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鶴を描いた方は、明るい緑色の背景に金銀の砂子を撒きました。まさに吉祥画という雰囲気で、お祝い事に贈れそうな、華やかな仕上がりになりました。

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下の写真では、箔を貼り付けた後、膠が乾ききる前に固い刷毛で箔の表面を叩いています。こうすることで箔が少し剥げ、趣のあるテクスチャーを作り出すことができます。

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波間に宝船、その間に散らすように金銀箔が施され、お正月にも飾れそうな、お目出たい雰囲気に仕上がりました。

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2日間というタイトなスケジュールで、扇面画の意匠の考案から着彩、金箔貼りまでを全員終えることができました。途中、参加者の方から「この扇は娘に…」といった話も耳にしましたが、時間が許せばお一人ずつ、扇に込めたメッセージについて、お話をいただきたかったです。最後に皆さんの作品を紹介します。どんな想いを込めて制作されたか、想像していただけると嬉しいです。

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扇子に仕立て上がるのはまだ先になりますが、出来上がりが本当に楽しみです。