2017年04月29日(土) 作れちゃう
2/11、12の2日間にわたり、大人向けのオルタナティブ写真講座が開催されました。
講師には、2/5に行われた「わくわくアトリエ」からひきつづき、静岡市内で「大野写真研究室」や「レンタル暗室とりこ」を営む、大野仁志さんをお迎えしました。この講座では、美術館の一室を暗室として使用し、一風変わった現像体験をしていただきました。
1日目は、スマートフォンなどで撮影したデジタルデータをアナログにプリントする「デジネガ」という手法に挑戦しました。デジタル写真→銀塩写真というイメージが結びつかず、皆さんの頭の中に???いっぱい浮かんでいる様子でしたが…ともあれ撮影に出発しました。
実技室の向かい側にある中庭を被写体にして、撮影のポイントについてレクチャーを受けました。今回はモノクロに現像するため、ものの形「フォルム」や、光と影が作り出す「コントラスト」に意識して撮影するよう心がけました。
この日は雲ひとつない青空、素敵なフォルムやコントラストがたくさん見つかりそうな、良いお天気でした。
石畳の階段も恰好のモチーフです。撮影する人がいつの間にか被写体になっていることも。
撮影会では、各々が興味を持った風景に引き込まれ、どんどん奥へと入っている様子が見てとました。慣れ親しんだプロムナードも、カメラを通して眺めると、新しい視点、小さな発見の連続でした。
次に、撮った写真(デジタルデータ)を銀塩写真に現像するため、画像をフォトショップで加工し、白黒反転させてネガを作りました。今回は参加者の方の材料費の負担を抑えるためにコピー用紙に出力…!コピー用紙でもネガになるんですね。
午後からは暗室で現像作業を行いました。静岡県立美術館の講座室をまるごと暗室仕様にしたのは今回が初めてですが、大野さんは手馴れた様子で、あっという間に暗室を作っていました。暗闇の中での作業は、なぜかちょっとわくわくする感じ…きっと参加者の皆さんもそうだったに違いありません。
1枚目の現像では、露光時間に変化を持たせ、モノクロのトーンを作り出しました。これを見て、自分が現像したい濃さを決め、露光時間を算出します。
最後は全員のネガとポジを並べて作品鑑賞を行いました。印画紙にプリントされた写真は、繊細な光が細密に捉えられていて、本当に綺麗でした。よく、写真は複製技術の芸術などと言われますが、デジタルカメラやスマホで撮影した画像を白黒へ、さらに現像の工程を経て自分の作品に落とし込む、といった一連の流れを体験し、皆さんの作品から、1点ものの深い味わいが感じられました。
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2日目は「フォトグラム」という技法を体験しました。この技法では、カメラを用いずに感光紙と光源の間にさまざまな物体を置き、その物体を直接露光させてシルエットを焼きつけます。有名なところでは、マン・レイが同じ技法を用いて作品をつくりました。昨日と同様、私たちにとっては未知の写真技法です。一体、どのような作品に仕上がるのでしょうか。
色々な素材が必要ということで、採集に出発しました。落ちている木の実や葉っぱ、作品が面白くなりそうな物体を探して県美周辺を散策しました。
実技室にも色々な素材を用意しました。くしゃくしゃにしたセロファン、絡まった紐、梱包材のプチプチ…。本当に使えるのか不安になるようなものの数々です…。
採集した素材と実技室のアイテムを組み合わせて、構図を考えます。ただ単純に構図を考えるだけでなく、露光されたらどのような影が落ちるのか、透ける素材はどんな風に投影されるのか、想像しながら構成していきます。
組み立てた構成ごと暗室に持っていき、印画紙の上で同じように組みなおし露光します。現像、停止、定着液につけて水で洗い流すと…
印画紙の上に置いた色々な物体が、シルエットとともに写しだされました!上の作品には、唇や蜘蛛のかたちのオモチャ、?フォークも使われているのがわかります。光を通さないものは白く、通すものは半透明に、異なる素材の重なりが、不思議な奥行を生み出しています。最初はひとり1枚、作品を完成させるのが目標でしたが、皆さん、講座が終わる直前まで、色々なパターンに挑戦していました。
こちらが、出来上がった作品の数々です。自分の手を使った作品もありますね。洗濯ばさみやボタン、シダの葉っぱに蔓草、どこにでもありそうなものが、こんな素敵な作品になるなんて、本当に驚きです。
今回の講座では、2つの技法を通して、普段とは違った角度から「写真」にふれることができました。日頃からデジタルデータの写真に慣れ親しんでいる私たちにとって、現像という行為自体が未知の領域でしたが、それを体験することによって、写真の原点を知る貴重な機会となりました。