作れちゃう

12/9-10 創作週間SP「木版画でポストカードをつくろう!」

実技室プログラムのお知らせです。

12月9日(土)と10日(日)に創作週間スペシャル「木版画でポストカードをつくろう!」が開催されました。

皆さんは木版画というと、どんな絵を思い浮かべますか?多くの方々は、小学校で経験したような白黒でざっくりとした印象の作品や、浮世絵を思い浮かべるのではないでしょうか。現代の木版画は、技法と表現が多様化しており、一見すると銅版画のように見える作品すらあります。今回の講座でも、それぞれの方向性に合わせて先生に助言を頂きながら、思い思いの作品が出来上がりました。作品と共に、当日の様子を見てみましょう。

【1日目】

今回の先生は、当館実技室のインストラクターを務めていただいている、木版画家の藤田泉先生です。

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まずは、木版画についてのお話です。伝統的な木版画から創作版画、そして現代版画について、代表的な作品を挙げながらお話いただきました。そのあとに、事前に持ってきていただくことになっていた下絵を確認し、色合いや形などを決定します。版木は1人2枚お配りし、裏表使えるので、4版作ることができます。基本的に、色ごとに版木を変えるため、下絵の時点で色数を決定することが重要です。

次に、版木に下絵を転写します。その前に、まずはトレーシングペーパーに書き写します。

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判子と同じ理由で絵柄が鏡文字になるので、トレーシングペーパーに描いた面を裏返して、版木に転写していきます。

こちらの版が、版木に転写した後です。見づらいですが、このように鏡文字になります。(MERRY CHRISTMASと書いてあります)

 

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次は、いよいよ彫刻刀で彫ります。軽やかに彫り進める先生を見ていると、簡単に彫れそうに思えてしまいますが、刃の角度や力のかけ具合を自分で意識的に調節しないと、なかなか思い通りになりません。参加者の皆さんには、基本4種類の彫刻刀をお使いいただきましたが、各彫刻刀の特長を2日間で完全に習得するのは困難です。とにかく、絵柄通りに彫れるように、施行錯誤しながら彫りを進めました。先生の作品と版をお持ちいただいたので、指で触って、彫り具合などを参考にさせていただきました。

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細かい絵柄を彫っている時に、注意を払っていても刃が滑って、欠けさせてしまうことがあります。一度彫ったら元に戻せないので、ショックを受けます…が、なんと、修復することができます!大変細かい作業になりますが、このやり方を覚えておくと、万が一の時に安心です。

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1日目は各自黙々と彫り進めて、あっという間に終了しました。彫り終わるか心配な方はお持ち帰りして、家で進めていただきました。

 

【2日目】

摺りの工程です。単に摺るだけ…と思われがちですが、かつて、「彫師」と「摺師」が分業していたほど、彫りと共に奥が深い工程です。今回は最終的にはがきに摺るのですが、まずは試摺として、画用紙に摺っていただきました。

 

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この画像のように、摺る際には様々な種類の道具を使用します。「ばれん」は使用された経験がある方もいらっしゃると思いますが、「はこび」など見慣れない道具も登場しました。先生にそれぞれの道具の説明をしながら、実演していただきました。まず、水で溶いたヤマト糊(でんぷん糊)を「はこび」を使って、版木にのせます。つぎに、絵の具をはこびで取り、刷毛にのせます。その刷毛を、色をつけたい部分にすりこみます。

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そして「ばれん」で摺ります。

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すると、このように摺り上がります。

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この工程を、版の枚数分繰り返して行います。下絵通りに形が出て、参加者の方々も笑顔になった場面でした。試し摺りなので、表したい部分がちゃんと出ているか確認したり、ばれんのつかい方(摺り方)を練習したりします。思い通りに摺るのは難しいのですが、摺り方を少し変えただけで、作品の表情が変化するところが、版画の醍醐味とも言えます。ある程度試し摺りしたら、本番の紙を使って摺ります。こうして、午後の時間を摺りの作業に費やしました。

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さて、こちらは試し摺りの段階でしたが、こんなに素敵な作品が出来上がりました!

 

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年賀状やクリスマスカードはもちろん、季節問わず使えるポストカードをつくった方もいらっしゃいました。年賀状は、直接はがきに摺るだけでなく、パソコンに取り込んで、プリンターで出力する方法もあります。パソコンで編集すると、年賀状だけでなく、オリジナルのカレンダーなどへの展開を楽しむことができます。プリンターで出力しても、作品の線や面には、機械で表現できない独特な温かみがあります。

今回の講座では、専門的な道具をお使いいただきましたが、家でも引き続き摺っていただけるように、各道具の代替品として、ご家庭の日用品を使った場合もご紹介しました。みなさん、既に版は仕上がっていますので、これからご自身で制作活動をお楽しみいただければ嬉しく思います。もちろん実技室(アトリエ)を開放している創作週間でも、制作を続けていただけます。

「創作週間」では、静岡県立美術館の実技室(アトリエ)を開放しています。
実技室にある道具を使用し、先生にアドバイスをいただきながら作品制作ができます。初心者の方は、木版画インストラクターの藤田先生の在室日にお越しください。インストラクター在室日については、こちらからご覧いただけます。創作週間中は、随時見学していただけます。興味はあるけどちょっと…という方、まずは一度お気軽に越しください。