作れちゃう

11/19 わくわくアトリエ「発泡スチロールで生き物の彫刻を作ろう!」

11月19日に、「めぐるりアート静岡」関連ワークショップ、わくわくアトリエ「発泡スチロールで生き物の彫刻を作ろう!」が開催されました。

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講師には、「めぐるりアート静岡」で当館の展示を担当された、彫刻家の池島康輔さんをお招きしました。皆さんは「めぐるりアート静岡」をご存知でしょうか?このプロジェクトは、静岡市内のさまざまな場所(静岡県立美術館、東静岡駅前のアート&スポーツ/ヒロバ、静岡市美術館、中勘助文学記念館、村上開明堂七間町第2ビル)を会場に、今を生きるアートを紹介する展覧会です。静岡大学を中心に4年前から始まり、5回目となる今年のテーマは、「まち ひと とき むすぶ」でした。既に会期は終了していますが、ここで少し池島さんの作品をご紹介いたします。

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池島康輔≪死肉貪獣≫2014

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写真の作品は、当館企画展会場へと向かう階段の踊り場に展示されました。「めぐるりアート静岡」のパンフレットにも掲載されていたので、目にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。この他にも、エントランス、名品コーナー、ロダン館のそれぞれに作品が展示され、来館された多くのお客様が、繊細で緻密な彫刻に、思わず足をとめて見入っていました。

池島さんの作品には、一本の木材から像を彫り出す「一木造り」という技法が用いられていますが、今回のワークショップは小学生からの参加ということもあり、加工しやすい発泡スチロールを使用し、いくつかの部材をパーツごとに加工して組み上げる「寄木造り」という技法を用いて行われました。

1はじまり

それでは当日の様子をご紹介いたします。ワークショップ開始!子どもから大人まで、彫刻作業がしやすいように、床席と机席を選択できるかたちで会場をセッティングしました。実技室の中央には今日の材料となる、たくさんの発泡スチロールが置かれています。

2作品紹介
はじめに、池島さんから作品についてお話を伺いました。当日は「めぐるりアート」終了後だったこともあり、展示風景とともに1点ずつ解説をしてくださいました。≪死肉貪獣≫(ハイエナ)が登場すると、動物博士のような子が、池島さんと一緒になって、色々な知識を披露してくれました。お話の後に質問時間を設けたところ、大人の方からも彫刻技法に関する質問が相次ぎました。

3モニタで作り方
つづいて、作業工程の説明がありました。モニターに写っているのは、池島さんがワークショップのために用意してくださった、発泡スチロールのアヒルさんです。スタッフもワークショップ前日までに試作をしましたが、池島さんのアヒルは各段にハイレベルでした…。

4アヒル作り方
こんなに可愛らしいイラスト付工程表も用意してくださいました。

5アヒル試作
さらに、各工程ごとのアヒルの試作まで…!発泡スチロールにアヒルを型取り(左)、同じ型を数枚重ねて胴体部分の厚みを出します(右)。それを削り出して、理想のアヒル像に近づけていきます。

ホワイトボード
上記のような工程、削って形づくることを「彫刻」(カービング)といい、粘土などで肉付けしながら形づくることを「彫塑」(モデリング)と呼びます。今回のワークショップでは、最初に作りたい生き物をスケッチした後、水粘土でモデリングをして、それを見本に発泡スチロールで彫刻をします。

6先生に相談
各自、制作がはじまりました。池島さんのお話をふまえて、図鑑や資料を見ながら、何を作ろうかと案をめぐらせます。

7図鑑でスケッチ
作るものが決まった人からスケッチを開始。この後の作業がしやすいよう、図鑑のイラストなどを参考に、生き物の「かたち」を極力シンプルな線でとらえるよう心がけました。

8ねんどで塑像
つぎに、スケッチ(平面図)をもとに立体を起こします。子どもたちは、この工程に苦戦しているようでした。たしかに、平面図を見てその向こうにある「かたち」を想像するのは大人でも難しい…。

9塑像アップ
でも、粘土を使って手を動かしているうちに、なんとなく「かたち」が見えてきました。

10型づくり
粘土のかたちが出来上がったところで、そこから型紙を作ります。彫刻のベースとなるかたちなので、生き物全体をとらえることが出来る視点を探して切り取ります。

11型を写す
この型紙を発泡スチロールに写し取り…

12型を切る
スチロールカッターで型どおりに切り抜きます。1枚切り出したらもう1枚…胴体の厚みを出すために、同じ型が数枚必要になります。

13型をくっつける
基本となる型以外に、手足のパーツなども切り出します。全て揃った時点で、スチのりとマスキングテープを使って接着します。

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いよいよ彫刻のスタート!スチロールナイフを小刀のように使い、かたちを削り出していきます。最初はざくざくと大きなかたちをとらえて彫りすすめます。

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大まかなかたちが出来たところで、ナイフをサンドペーパーに持ち替え、理想のかたちになるよう、やすって仕上げていきます。

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上の写真の方は、丸まった猫を作ろうとしています。顔の凹凸などの、繊細で難しい部分について、池島さんからアドバイスを受けています。彫刻は、納得いくかたちになるまでひたすら彫り続けるという根気のいる作業です、いつの間にか付添の親御さんが大活躍している場面も見られましたが…

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色塗りがはじまると、子どもたちの目が輝きました。上の写真の生き物はなんだか分かりますか…?いま、子どもたちの間で人気の「メンダコ」です。図鑑を見せてもらいましたが、形といい、色といい、本当にそっくりです!

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こちらは、自宅で飼っているというインコと、インコが大好物のミカンをセットで制作中。

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上の彼は、スタッフの間で、キョロちゃんを作っているのでは…と話題になっていましたが、違いました。立派なくちばしとカラフルな色味が、とても南国の鳥らしくて素敵です。

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動物博士の彼は、ウミガメを作っていました。お母さんと一緒に長い時間かけて頑張った、甲羅のカービングが秀逸でした。

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こちらは可愛らしいリスさんです。よく見ると手に何か持っていますね…?後ほど、完成作品をご覧ください。

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なんとも愛らしいシルエットの「オオサンショウウオ」も完成しました。四角い発泡スチロールをここまで丸く滑らかにするのはとても大変だったと思います。

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子どもたちの制作がひと段落したところで、発表会の時間を設けました。大人の方たちは、色塗りよりも、最後まで彫りの完成度を追及されている方が多かったため白い作品が目立ちますが、どなたも、とても丁寧にカービングされていました。写真でお伝えしきれないのが残念です。

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こちらは先にも登場したリスさんです。木の実を持っていたんですね。なんだか今にも動き出しそうな存在感です。前足と木の実の繊細な彫刻がとても上手に出来ていると、池島さんからコメントをいただきました。おひとりずつ、全員の作品についてお話を伺いましたが、皆さんそれぞれにこだわった点が異なり、その点がきちんと作品に反映されていました。

28おわり
最後に、参加者の皆さんと作品とともに撮影しました。1日のワークショップとしては工程が盛りだくさんで、難しい内容もあったのですが、想像以上に見ごたえのある作品に仕上がりました。子どもたちにとっては、平面から立体作品を創造する、それも彫刻で削り出すという、プラスではなくマイナスの作業は、はじめて体験するものづくりの方法で、ものの見方が変わる、広がる貴重な経験になったのではないかと思います。皆さんの「こういう作品を作りたい」という気持ちを丁寧にくみ取り、お一人ずつアドバイスをしてくださった池島さん、素敵なワークショップを本当にありがとうございました!