作れちゃう

10/28-29 実技講座「巻物に描く秋の庭園画」

実技室プログラムのお知らせです。10月28日と29日実技講座の日本画編、「巻物に描く秋の庭園画」を実施しました。今回の講座は、開催中の企画展「美しき庭園画の世界」の関連講座です。企画展には、さまざまな庭園画や関連作品が出品されていますが、今回は主にスケッチや、実景に基づいた作品から学び、静岡県立美術館の周辺をスケッチや写真撮影したものを基にして一つの絵巻をつくりました。

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講師には日本画家の森谷明子さんをお招きしました。森谷さんは、静岡を拠点に、絵画作品から文筆活動まで幅広く活動されています。

2日間の実施ですが、2日目の午後に台風に見舞われ、惜しくも予定を繰り上げて早めの解散となりました。今回完成に至らなかった作品は、引き続き11月の創作週間(アトリエを開放する日)でも制作していただけます。それでは、2日間の様子をご覧ください。

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【1日目】

企画展では、絵巻物が多く出品されており、講座でも巻物の形式で作品を作ります。講座の冒頭では、この巻物についての今回の企画展を担当した野田麻美学芸員のレクチャーから始まりました。巻物の扱い方を実際にご覧いただき、実際に画面が移り変わる様子を知っていただきました。巻物は紐を解いて、自分の肩幅くらいに広げます。そして右からを左に巻き取っていきます。

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すると右から左へ、場面が変化していきます。簡単な仕組みですが、このように画面が移り変わることや、それに伴って物語が展開していく形式には、動画や映像に慣れた私たちにとっては新鮮な楽しさがありました。

その後、展示室へ移動し、野田学芸員の解説を聞きながら企画展を観覧しました。「庭園画」と言っても、画家が見た景色をそのまま描くものや、有名な名所など特定の場所に重ね合わせて描いたものなど、いくつも種類があります。今回の講座では、谷文晁の実景に基づいた庭園画を主に参考にして制作をすることにしました。谷文晁の作品では、臨場感を出すために陰影法、透視遠近法を用いたり、モチーフを強調したりと様々な工夫が見られました。

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展示室での鑑賞を終えたあと、さっそく外にスケッチと写真撮影に出かけました。台風の影響でこの日の降水確率は高かったものの、幸運にも雨が降らない時間帯に出かけることができました。美術館の周辺は、晴れていると、ピクニックをしている人、ウォーキングしている人がいたり、隣接する静岡県立大学の学生が部活の練習をしていたりして賑わいます。お昼をとりながら、散歩しつつ、スケッチや撮影をしました。美術館のまわりには、四季を通して見ごろを迎える様々な種類の木や植物があり、中には紅葉し始めたものもありました。

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何度も通っている道ですが、改めて見たら立派な木が立っていました。気になるものをスケッチしたり、写真撮影しました。

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実技室へ戻り、制作に入る前に水墨と筆の使い方の練習をしました。 1本の筆と、1種類の墨を使うだけでも、筆致や墨の濃淡によって幅広い表現ができます。筆を動かす速さ、筆圧が大きく関わりますが、ペンや鉛筆など硬筆に慣れている私たちにとってその感覚が難しく感じられます。それに加えて、失敗できないというプレッシャーで緊張してしまいます。

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今回は景色に木が多いので、小枝や葉の表し方や、必要な人は竹の表現の仕方を練習しました。木の葉を一つずつ描くと、膨大な時間がかかります。そこで、企画展に出展されている谷文晁のスケッチなどの作品を、木がどのように簡略されているか参照して練習していきます。スケッチを見ると、線だけでなく、面や点でも表されています。さらによく見てみると、木の種類によっても、葉の流れや形が違います。これは縦っぽい、横っぽいな、など印象を大切にしながら、どのようなタッチを使えば的確に表現できるか試行錯誤しました。

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【2日目】

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いよいよ本番です。今回描いた紙の長さは、なんと約170センチ!人の身丈ほどの長さに挑戦しました。今回は、基本的には連続する画面を描くというよりは、3~4場面を描くことにしました。順番は、時系列になっていたり、起承転結になっていたりと、場面の移り変わりを楽しめるようにしたものが多くみられました。 中には人物が出てくる作品もありました。

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出展作品からヒントを得て遠景と近景を組み合わせた作品もあり、日本平の眺望の良さと緑豊かな美術館周辺の特色が作品にも反映されているようでした。作品の中には、 美術館の建物を入れてくださった作品も数点あり、現代の建築物も墨で描かれると印象が違って見えて面白く感じられました。午後には台風が東海地方に接近したため、残念ですが予定を繰り上げて解散となりました。引き続き完成に向けて制作していただき、巻物として巻きながらご自身の作品を鑑賞して楽しんでいただけたら幸いです。

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