作れちゃう

9/9-10 実技講座・切り絵「直虎大喜利」

9月9日、10日の2日間にわたり、「戦国!井伊直虎から直政へ」展関連・切り絵ワークショップ「直虎大喜利」が開催されました。

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講師には、静岡県出身で国内外でご活躍されている、切り絵アーティストの福井利佐さんをお招きしました。福井さんには毎年ユニークなワークショップを考案いただき大好評を得ていますが、今回のワークショップは、2日間じっくりと時間をかけて制作に取り組む、大人向けのワークショップを実施しました。

切り絵①

下の写真は、福井さんが講座のために作った試作品で説明をしているところです。これから展覧会を鑑賞した後に、直虎をとりまく世界や人々について想像をふくらませ、「なおとら」の四文字であいうえお作文を作ります。文章が思いついたら、それに合ったイラストを考案して切り絵で仕上げます。ちょうど、いろはカルタの「読み札」と「絵札」を切り絵で作るといった感じです。

切り絵⑧
早速、鑑賞に出発!本展覧会を担当している石上学芸員から、フロアレクチャーを受けました。意外にも、今回ご参加下さった方たちの半数以上は大河ドラマをご覧になっていませんでした…。数行の言葉で直虎を表現するためには、よくよく解説を聞いて、資料を見て、直虎のイメージを構想しなければなりません。

切り絵④

午前中に鑑賞時間をたっぷり取り、午後からは作品構想と切り絵の制作にかかりました。最新のマシ―ン、書画カメラで福井さんの手元を拡大!切り絵をはじめる前に、デザインカッターの使い方や、切り進め方のレクチャーを受けました。

切り絵⑥

つぎに、展覧会鑑賞を経て、皆さんが個々にイメージした言葉を出し合い、共有しました。福井さんも色々な言葉を考えてきてくださり、あっと言う間にホワイトボードがいっぱいにまりました。

切り絵⑨
「お」からはじまる言葉は、こんなイメージになりました。ひとりで全てを考えるのは大変ですが、皆さんのイメージから、何か良いヒントやアイデアが得られそうですね。

切り絵⑩
さらなるイメージを広げるために、辞典や図鑑といった色々な資料も用意しました。

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読み札の文章が決まった人から、文字の下書きに入りました。直虎を想わせる素敵な言葉の数々に胸を打たれました。

切り絵⑮
文章が決まると、皆さんすらすらと絵を描きはじめました。短い文章の内に情景を思い浮かべることができるのは、日本人ならではなのでしょうか。最終的には切り絵で仕上げるので、線を整理しながら下絵を描いていきます。

切り絵⑫
今回は、色々な種類の紙を用意しました。ラシャ紙、千代紙、色画用紙…。カラフルで、見ているだけでも楽しくなります。出来上がりの色も考えつつ…1日目は、下絵づくりまでで終了しました。

切り絵②
2日目は、ひたすら切り絵に集中!細かい線を切り落とさないよう、線と線を繋げて切っていくのが難しいのですが、それも切り絵の表現の特徴のひとつです。下の写真は、展示室でいちばんの存在感を放つ、井伊家当主を象徴する兜をモチーフに制作した作品です。線と面でとても上手に構成されています。

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彼岸花をモチーフに制作されている方もいました。繊細な技術が必要になりそうです…。福井さんが丁寧にアドバイスをされていました。

切り絵⑪

花弁をあえてシルエットにし、内側に赤系の千代紙を施してあります。外側の赤い枠も相まって、とても彼岸花らしい雰囲気がでています。

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朝の10時から制作を開始し、お昼をはさんで数時間…、いよいよ作品発表の時間となりました。「直虎大喜利」ということで、おひとりずつ文章を読み上げ、福井さんが「そのこころは…!」と意図を尋ねるかたちで進められました。

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「な」…なからいの
「お」…おのたじまをかくれみのに
「と」…とくせいれいをのりこえ
「ら」…らいせにつなぐ

「なからい」とは、親しき間柄を表すこ言葉だそうです。きっと大河ドラマを見ている方に違いありません…鶴や囲碁のモチーフが…泣かせます。

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「な」なみだする
「お」幼なじみ失い
「と」トラになった
「ら」らんせの女

虎になった女という表現が、当主として振舞わなければならなかった運命の、いかにも直虎らしいひびきです。座布団1枚!

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言葉と切り絵の両方を用いて表現するという機会は、めったにない体験だったことと思います。右脳と左脳をフル回転でワークショップに挑戦していただきました。いつもより少しハードルが高めの内容ではあったのですが、実は、こういうワークショップほど得られる気づきが大きかったりします。私たちスタッフも、参加者の皆さんが描かれた、直虎を象徴する様々なモチーフに驚かされました。ドラマの中に登場する直虎だけでなく、そのひとそれぞれの人物像が見えたのではないかと思います。参加者の皆さま、大作への挑戦おつかれさまでした。福井さん、心に沁みる素敵なワークショップをありがとうございました。