2011年09月30日(金) 美術品こぼれ話
以前、このブログでご紹介しましたが、当館所蔵の草間彌生の初期の大作が、いよいよパリとロンドンに貸し出されることになりました。
梱包用に特注した木箱です。ここに作品を収めます。ただしこの箱は、国内輸送用の内箱にすぎません。国外輸送のために、この箱をさらに大きな気密式の外箱に入れるのです。箱の制作や、作品の取り扱い方については、当館学芸員と修復家、そして輸送業者が、これまでに何度も何度も長い打ち合わせを重ねて、できたものです。すべては作品を安全に運ぶためです。
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丈夫で、しかし軽量化するために、部分的に段ボールを使っています。しかし段ボールといっても、3枚重ねになっている特殊なもの(トライウォールと呼んでます)で、たいへん強靭です。
木箱(内箱)の底面です。内箱は立てた状態のまま、外箱に引き出しのようにすべり込ませて収納します。そのため底面には滑りやすいような加工が施してあります。また出し入れするさいに引っかからないように、緩衝材などの出っ張りは面取りして角を削ってあります)。(今回担当してくれたヤマトさんのきめ細やかな技です。)
作品を木箱に入れました。この作品は側面のへりの部分まで絵の具がついているため、側面や底面をふれないように、基本的に木箱のなかに宙づりのような形でおさめます。長い輸送のあいだに留め金具がゆるまないよう、しっかり確認しながら固定します。作品の表面での作業になるので、手が触れたり、ものが当たったりしないよう、緊張して行動します。
作品を立てた状態で作業し、輸送するのは、これだけ大きな作品だと平置きにするとキャンバスがバタバタして絵の具層にダメージが加わるからです。その衝撃を緩和するためにキャンバスと木枠の間にインサートという特殊な素材を入れてあるのですが、それでもそのリスクを軽減するために、可能な限り、作品を横に寝かさずに、立てた状態のまま、梱包、輸送、展示する方法を考えたのです。
トラックに載せます。立てたまま運ぶために、トラックも大きな10tトラックを使います。学芸員が同乗して、ひとまず東京の輸送会社の倉庫へ運びます。そこで外箱に入れて、飛行機で旅立ちます。