2015年09月27日(日) 作れちゃう
9/20にひきつづき、切り絵アーティストの福井利佐さんを講師にお招きし、中学生以上を対象とした、大人向けの切り絵講座が開催されました。
この講座は前日と同様、現在開催中の展覧会「富士山―信仰と芸術―」展に関連して行われました。福井さんは毎年、展覧会の内容に合った面白い講座を提案して下さるのですが、今回は、本展覧会が富士山信仰をテーマにしていることに着目し、山・信仰・切り絵を結びつけるものとして、山岳信仰の盛んな東北地方で継承されてきた「切り透かし」という紙細工を講座に取り入れました。「切り透かし」とは、お正月やお祝い事に際して神棚に飾られるお飾りの一種で、参加者の皆さんには、この切り紙細工にならい、富士山信仰の「切り透かし」をつくることに挑戦してただきました。下の写真は、福井さんとアシスタントの松井さんが講座のために制作して下さったお手本です。(右:福井さん「富士山とコノハナサクヤヒメ」、左:松井さん「富士山の文字に鯛」)
はじめに、展覧会担当の石上学芸員の解説とともに、「富士山展」を鑑賞しました。信仰という視点から富士山を眺めると、富士山の絵画の中に、様々なモチーフが見えてきました。《富士参詣曼荼羅図》の日輪・月輪、山頂の大日如来、海辺に広がる三保の松原、絵札にいたっては、富士山牛王(ふじさんごおう)に描かれた猿…等々。参加者の方たちは、こういったモチーフの持つ意味を考えつつ、富士山信仰の「切り透かし」のデザインの要素として、再構築を試みました。
まずは、カッターを使って紙を切る練習から。四角い枠の中に○×を描いて、中に出来た図形をカッタ―で切り抜きました。切り絵は、中心から外側へ、細かい部分から大きな部分へ、切りやすいように紙を回しながら切り進めると良いと教わりました。当たり前のことのようですが、教えて頂かないと意外と気がつきません。これを意識できているかどうかで、仕上がりの綺麗さが格段に変わってきます。
続いて「切り透かし」の図案作成。今回の「切り透かし」は通常の切り絵と異なり、輪郭線が「白」になり、その後ろに「赤」または「紺」の色紙をあてて仕上げるため、白黒反転をどのように考えるかが難しくもあり、工夫の見せどころでした。とりあえず切り進めながら考える人、図案をまずは完ぺきに仕上げる人、三者三様の様子が見てとれました。
信仰をテーマにしているだけあって、制作の時間は静まりかえり、修行の一環のようでもありました…。とはいえ本来そういうものなのでしょう。山岳信仰をする人々は、こういったものをつくる度に、心をあらため、祈りや願いを込めてきたのだと思います。
全員が時間内に仕上がり、発表の時間となりました。作品が一斉に並ぶと、まさにそこは信仰の場といった雰囲気で、実技室が厳かな雰囲気に包まれました。福井さんが、ひとりひとりの発表に、丁寧にコメントして下さいました。この時間は、講師や参加者の方々はもちろんと思いますが、スタッフの皆もとても楽しみにしている時間です。いくつかの作品をご紹介いたします。
富士山と大日如来と猿の切り透かし
富士山に日輪・月輪と蓮の切り透かし
富士山にご来光、鶴亀の切り透かし
一富士二鷹三なすび(折戸なす!)の切り透かし
どれもご利益がありそうですね~。
今回の講座では、展覧会の鑑賞を通して、より深い見解のもと、富士山信仰の「切り透かし」を制作することが出来たのではないかと思います。出来上がったものは、ご自宅に飾って本当に信仰するも良し、作品として楽しむも良し…こうやって様々な可能性を提供してくれるのも、富士山の懐の深さ故でしょうか。改めて、富士山の有難さにふれる、良い機会となりました。
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【次回の講座のご案内】
★9月30日(水)までお申込み受付中です!たくさんのご応募お待ちしております。