作れちゃう

2/18 わくわくアトリエ「陰刻で妖怪を作ろう!陰刻技術開発研究」

2月18日に、わくわくアトリエ「陰刻で妖怪を作ろう!陰刻技術開発研究」ワークショップが行われました。
今回のワークショップでは、講師に「アートのなぞなぞ―高橋コレクション展」出展作家・西尾康之氏をお招きし、西尾さんが作品制作の際に用いる「陰刻鋳造」(いんこくちゅうぞう)という技法で、石膏の立体作品やレリーフ(半立体作品)の制作に挑戦しました。「陰刻」だからこその「妖怪作り」の様子を、参加者の皆さんの作品とともにご紹介します。

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「陰刻鋳造」という言葉は、大人でも聞きなれない方が多いのではないでしょうか。『アートのなぞなぞ-高橋コレクション展』図録には、次のように解説されています。「陰刻鋳造とは、粘土を指で押しつけ鋳型を作り、そこに石膏を流し込み、型を抜き取る手法である。」文章だけでは想像しにくいかもしれませんが、「たい焼きの型」と「出来上がったたい焼き」にあたる部分を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。陰刻鋳造では、自らの指や道具などで直接型となる部分を刻み、そこに、石膏などを流し込み固めて取り出したものが作品となります。私たち実技室スタッフも初体験の技法だったため、ワークショップ開始前に西尾さんからレクチャーを受けました。

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上の写真は、講師の西尾さん(写真右)と助手の松尾さん(写真左)が、レクチャー用の試作を作っているところです。今回のワークショップでは、信楽粘土を型の素材として用い、陰刻を施しました。

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型に石膏を流し込んで取り出した時のかたちを想像しつつ、指で粘土に陰刻を施していきます。凹にしたところは凸になる…などと考えるとかなり頭が混乱するのですが、流石は西尾さん、この技法を使いはじめて25年近くなるそうで、すっすっと軽く粘土を撫でたかと思うと、あっという間に型が出来上がりました。

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試作の陰刻(右:西尾さん、左:松尾さん)を終え、周囲にぐるっと粘土の土手を作り、石膏を流し入れる準備が整いました。

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細かい部分にもしっかり石膏が行き渡るように、オイラーを使って石膏を注ぎ込んでいきます。なんだかお菓子づくりのようで、わくわくしてしまいます。

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石膏が固まるまで待つこと20数分…西尾さんの試作が出来上がりました。かっこいい!陰刻とは思えない素敵な出来映えです。このような工程で、参加者の皆さんにも陰刻鋳造にチャレンジしていただくのですが、西尾さんの試作のように思い通りのかたちが出来ることはなかなかなく…、どんなにがんばっても意図とは違った不思議な、妖怪のような作品が誕生するという、一回性のそれがこの技法の特徴であり、醍醐味でもあります。

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開館とともに30名近い参加者の方々がお見えになり、いつになく賑やかな実技室となりました。小学1年生~70代の方まで、色々な世代の方々がテーブルに向き合って作業をする様子が、良い雰囲気でした。上の写真は午前(10:00~12:00)の2時間でレリーフ(半立体)作品を仕上げる、半日コース・午前組の方たちです。型となる粘土を、1人当たり2kg用意しました。

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こちらは、1日通しコース(10:00~16:00)本気組の皆さんです。本気組は、粘土を1人当たり10kg用意しました。最終的には立体作品になることを目指して、午前と午後に分けて半立体(表側と裏側)を制作します。

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午前組の参加者の中には、お子さんの手形をそのまま粘土に刻んでいる作品が見られました。作る人の指や爪の痕、細かな皺まで写し取ることができるのも、この技法の大きな特徴です。

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出来上がった粘土の型に西尾さんが石膏を注いでいきます。お菓子作りのようなこの工程は、きっと子どもたちも大好きな作業なのですが、石膏が硬化する前に素早く丁寧に行わなければならないので、講師やスタッフが行いました。固まるまで、ちょっとがまん。

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石膏が固まったら粘土の型を外していきます。

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上の写真は、粘土の型から石膏を取り出した状態です。この後、指の間などの細かい部分に詰まっている粘土や、石膏のバリを取り除きます。さらにもうひと手間かけて、余った粘土を水で溶き、筆で石膏の凹んだところ(影になる部分)に仕上げのシャドウを施して完成です。

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一日通しの本気組は午前に片面(表面)を作り終え、午後からは裏面を制作します。上の写真は、午前に出来上がった表面を、午後に型取りする粘土と合わせているところです。同じ大きさで後ろ身が作れるよう調整しています。

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裏面の陰刻も終えたら、石膏を注入します。土手のふちぎりぎりまで注がずにおいて、石膏をつけたサイザル麻で埋めていきます。

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表面+裏面で石膏を合体!固まるまで楽しみに待ちます…

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そして、立体のうさぎさん完成!!作品も笑顔も素敵です。このうさぎさんはなんと、現在、ご自宅のうさぎゲージに入っているそうです。

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本気組の中には、大人の参加者の方もたくさんお見えになりました。上の写真の方は、アンモナイトのような大きなレリーフを作っていました。これが土に埋まっていたら、きっと本物だと思ってしまうような完成度でした。

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それでは、半日コース・午後組の作品も少しご紹介します。こちらは、もともとが妖怪の「目玉のおやじ」を陰刻鋳造しました。本物より妖怪らしい雰囲気に仕上がっているように思います。

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つづいてこちらは、ムンク『叫び』を思い描いて作ったそうです。作者は小学生の女の子でしたが、モチーフの選択が秀逸です。

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シンプルに見える猫さんの顔ですが、ちゃんと目や鼻が出っ張っていて、耳の内側はへこんでいます。陰刻とは思えないほど丁寧に作られていますね。

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1日コース・本気組は、大きな立体作品が出来上がりました。上の作品はナマズだそうです~。口やヒレがなんともいえず可愛いです。

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大人が作った亀の作品です。私個人的には、いちばん妖怪っぽいオーラを感じました・・・。

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こちらも大人の作品です。レリーフで2体の魚を作成されました。深い海の底にはこんな魚がいるんじゃないかと思わせる、とても雰囲気のある作品です。写真で全てをお見せできないのが残念ですが、陰刻が生み出す力強い文様が、参加者の皆さんの作品にしっかりと刻まれていて、なにやらすごいエネルギーを湛えた妖怪がたくさん誕生しました。

今回のプログラムに参加された方から、「展示中のアーティストが講師だったので、このワークショップにとても興味があった。制作過程を知ることができ、より一層、作品の魅力が増しました」という声をいただきました。西尾さんの作品を見て、同じ技法で自分でも作ってみて、さらにまたもう一度、西尾さんの作品の前に立って…いつもの何倍も、作品を感じることができたのではないでしょうか!

★★★お知らせ★★★

『アートのなぞなぞ-高橋コレクション展』は、2月28日をもって会期終了となりました。本展覧会の終了と同時に、静岡県立美術館・本館は6月末まで長期工事休館に入ります(本館休館中もロダン館は開館します)。4月~6月の間、実技室関連の一般来館者向けプログラムは、「ロダン館デッサン会」「ロダン彫刻でデッサンの基礎を学ぶ」のみの開催となります。応募の詳細はホームページ(イベント一覧)からご確認ください。