2011年11月15日(火) 美術館の独り言
昨日は、京都国立博物館名品展の展示替え作業を行っていました。
京博展の図録表紙に使用している、《柳橋水車図屏風》は後期からの展示です。《柳橋水車図屏風》は、20作例以上が確認されていますが、京博のものは、古くから名品として知られているものです。現在は黒く酸化している水の流れは、銀を用いて描かれています。また、橋や水車には金箔が用いられていて、この作品が描かれた当初は、とってもきらびやかで豪華な様子だったんだろうなあと想像します。画面を右から左に見ていくと、右側の柳は芽吹いたばかりの新芽であるのに対し、左側の柳は若葉の茂る様子が描かれていて、季節の移り変わる様子も描かれています。描かれている場所は、京都の宇治で、流れる川は宇治川、橋は宇治橋です。この橋を渡った向こう側には、浄土を体現した平等院鳳凰堂があります。今回の展覧会のサブタイトルである「祈りと風景」にぴったりな作品ではないでしょうか。ぜひご覧になっていただきたい作品のひとつです。
後期からの展示作品は、《草花文様四つ替小袖》もあります。ちらしの裏で使用している作品ですので、気になっているお客様も多いのではないでしょうか。全体が4区画に分かれていて(「段片身替わり」と言います)、それぞれの区画に、梅、藤、楓、雪持笹が刺繍されています。大胆な配置、対称的な配色、そして繊細な刺繍。ぜひ生でご覧になっていただきたいです。
京博展もいよいよ折り返し地点ですが、後期のみの出品作品も素晴らしい作品が勢ぞろいしています。また、《餓鬼草子》は前期は二段と三段を展示していましたが、後期は場面を変えて、四段から七段まで展示しています。《奥之細道図巻》や《乗興舟》も前期とは違う場面が出ています。
これだけの作品を一度に見る機会はなかなかないと思いますので、まだご覧になってない方はもちろん、前期展示を見たという方も、ぜひ「京都国立博物館名品展 京都千年の美の系譜―祈りと風景―」展に足をお運びください。お待ちしています!