2015年03月25日(水) 美術館の独り言
3/20~22に「ART+ 美術館でことばと出会う3日間」が開催されました。
ART+(アートプラス)は、高校生、大学生、専門学校生を対象にしたプログラムです。普段は学校以外の時間も部活や塾と忙しく、美術館に訪れる機会がなかなか得られない学生さんたちですが、この3日間は毎日美術館に通い、作品とゆっくり、じっくり向き合っていただきました。「ART+ 美術館でことばと出会う3日間」というタイトルの通り、美術館で「作品」と向き合い、その印象や感想を自分の「言葉」で表現するという趣旨のプログラムですが、最終的には、参加者の言葉を来館者に閲覧可能なガイドブックに仕上げることを目標としました。
講座には、静岡県立清水南高等学校・芸術科の生徒さんたちに多くご参加いただきました。偶然にも、参加された大学生の方も同校出身、そしてブログを書いている私も同じ出身…ということで、南高生づくしの3日間となりました。
【1日目】
1日目の午前中は、アートカードを用いて言葉のウォーミングアップをするゲームを行いました。静岡県立美術館の所蔵品が48枚セットになったアートカードは、作品の知識がなくても、ヴィジュアルでゲームを楽しむことができます。「名探偵ゲーム」「お話をつくろう」「展覧会をつくろう」といったゲームを行うなか、皆さん自然と、作品について楽しく語っている様子が見られました。
午後は、このプログラムを担当した学芸員とともに展示室に向かい、収蔵品展「人を描く」(3/3~3/31)を鑑賞をしました。中世から近代までの作品を取り上げ、日本の人物画の色々な表現が見られる展示を前にして、芸術科の学生さん方は興味深々でした。この最初の鑑賞で、興味を持った作品をひとつ選び、まずは自由にスケッチしたり、自分の感想を書き留めていきました。つぎに、みんながどんなことを考えているのか、選んだ作品を前にして、自分の思ったことや気づいた点を発表し、共有しました。皆さんの発表に対して学芸員が丁寧にコメントし、そのやりとりや内容がとても新鮮で、知らぬ間に一般のお客さまも集まり、耳を傾けていました。
みんなの意見と感想を共有した後、実技室に戻って執筆作業にかかりました。普段、絵筆の扱いは慣れている皆さんですが、作品を「言葉」で描写する、ということには不慣れなようで、悪戦苦闘している様子も見られました。それでもさすがは芸術科の生徒さん、作品の構図の妙や筆使いの面白さ、といった技法に関する表現はすらすらと記述されていました。
【2日目】
2日目の朝は、ちょっと気持ちをリラックスしてもらうために、アートカードを用いたジェスチャーゲームを行いました。実技室助手考案のむちゃぶりゲームでしたが、≪考える人≫から真っ黒な抽象画まで、すごいジェスチャーが繰り広げられ、おおいに盛り上がりました。
気持ちもほぐれたところで再び展示室へと足を運び、他の仲間が選んだ作品を一点一点、丁寧に鑑賞しました。同じ作品を見ても、自分の印象と他人の印象、気が付く点はれぞれに異なります。そういった視点の違いも共有するために、意見交換シートを用いて、個々の意見に全員がコメントを書き入れました。午後からは、自分の言葉とみんなの言葉を参考に、ガイド執筆のための原稿作りにかかりました。
【3日目】
3日目の朝、担当学芸員から、赤ペンの入った原稿が各々に手渡されました…。(自由に思ったことを書いていいって言ったじゃん。ここ直されちゃうの??)そう思った人もきっといたはずです。美術館に展示されている作品の中には、個人蔵のものも含まれます。自分ではとても面白い表現で書けたと思っても、その作品を大切にしている人がそれをどう捉えるかはわかりません。美術館に置くガイドを執筆するためには、色々と気をつけなくてはならないこともあるのですね。
推敲に推敲を重ね、いよいよ本番の紙へ執筆。パソコンは使わず、手書きで丁寧に仕上げます。余白に作品画像を貼りつけたり、イラストを添えたり、デザインコースの生徒さんはレタリングまでしてくださいました。この辺りのセンスの良さと手の速さは、さすが芸術科!といった感じでした。
文章も紙面のデザインも、それぞれの個性が反映された素晴らしいガイドに仕上がりました。さいごに皆さんに3日間の感想をうかがったところ、「こんなに時間をかけてひとつの作品を見たのははじめてで、とても貴重な経験になった」、「美術館という場所のイメージが今までと変わった」、「言葉にすることで色々なことに気が付けた。これからも時間をかけて作品を見るようにしたい」、「いつもは制作中心で、絵を見る機会があまりなかったけど、作品を制作していくうえでも重要な気づきがたくさん得られた」等々、私たちスタッフにとっても嬉しい言葉をたくさんいただきました。今回制作した作品ガイドは、展示会場(収蔵品展「人を描く」)にて閲覧可能です。ぜひ、手に取って、作品とともにご覧ください!
2015年03月01日(日) 作れちゃう
実技室プログラムのご案内です。
今年度最後のねんど開放日は、冷たい雨の降る一日でした。
でも、実技室の中はあったかいんですよ~!
本日も午前中からたくさんのご家族にお越しいただき、素敵な作品が次々に実技室で作られていきました。
協力して制作中…何やら楽しいものが作られそうな予感がします。
こちらはお父さんと娘さんで一匹のどうぶつを作っています。何のどうぶつになるのかな??
今月お誕生日の人には大きなバースデーケーキ!
そして…こちらは美術館のスタッフが作りました。
もうすぐひなまつりですね。ということで、主役の二人です!
【受付状況】
本日は10:00の時点で、約100名の方が並ばれました。
10:00受付の回に80名ご参加いただき、残りの方には11:00受付の回の整理券をお配りしました。
11:00受付の回、13:45受付の回は、どちらも定員内で活動していただけました。
それでは、新年度も実技室で皆さんの笑顔にお会いできることを楽しみにしております!
※4月以降(平成27年度)の実技室プログラムのスケジュールは、3/20ごろに当館ホームページやチラシでご案内いたします。
2015年02月15日(日) 作れちゃう
実技室プログラムのご案内です。
本日のねんど開放日は、午前、午後とも比較的に穏やかな人数で開催となりました。こういう日に参加された方は、ちょっとラッキーです!教室もねんどもめいっぱい使って、大きな作品を作ることができます。今日も手の込んだ素敵な作品がたくさん出来上がりました。
ハンバーグ、オムレツ、パスタ、ケーキ…!お誕生日の食卓を作ったそうです。本物と同じくらいの大きさで、とても上手にできています。
こちらは機関車。写真の僕は機関車の積荷の石炭を担当したそうです。石炭のごつごつ感がいいかんじです。
そしてこれは、ボール入れらしいです。丸めたねん土をぽいぽいなかに投げ入れて遊んでいました。楽しそう!
次の写真は、昨年夏まで当館で学芸員をされていたFさんの作品です。上からと撮りましたが、なんだか分かりますか?(ヒント:伸びた手の先には、ねずみがいました)正面からみると、当館所蔵の、伊藤若冲≪樹花鳥獣図屏風≫に登場する「ジャコウネコ」に似ている気がしてしまうのは、私だけでしょうか…
こんなふうに、ねんどって何でも、遊びたいもの、欲しいものが作れちゃうんです。色々なアイデアを持って、素敵な作品を作りにきてくださいね。
【受付状況】
10:00受付の回、11:00受付の回、13:45受付の回、
どちらも定員内で活動していただけました。
次回の粘土開放日は3/1(日)です。
受付方法や持ち物などは、粘土開放日のページをご覧ください。
2015年02月14日(土) 美術館の独り言
これまで2回に渡ってご紹介してきた『レオナルド・ダ・ヴィンチの羽ばたき鳥形飛行機』。
最終回となる今回は、③「主翼と尾翼」の製作から完成までの様子をご紹介していきます。
翼用支柱(鳥の翼の小骨に当たる部分)の溝をサンドペーパーで削って組み立てしやすいように
加工します。
主翼支柱部(鳥の主翼の骨格部分)も同様に溝をサンドペーパーで削っていきます。
サンドペーパーでの加工終了後、主翼支柱部に翼用支柱を仮組みして合わせ具合を確認します。
左右両方の主翼の支柱部分の仮組みまで終了したところです。
一旦、全ての翼用支柱を外し、左右の主翼支柱部の端の穴に紐を通していきます。
紐を通し、再び翼用支柱を接着して完成した左右の主翼部分。
次は尾翼先端部分の製作です。主翼と同様に各部品の溝をサンドペーパーで削り、取り付けが
容易なように加工します。
それらを接着して尾翼先端部分を作ります。
尾翼先端部分を尾翼ホルダーに接着して尾翼全体が出来ました。
主翼部分の上側にある溝に紐を接着していきます。
尾翼先端部分にも溝があり、こちらにも紐を通して接着します。
完成した左右の主翼部分を先に組み立てたパイロットの上部にある主翼サポートに取り付けます。
最後に尾翼部分をパイロットの台座に取り付けて全ての組み立てが終了です。
組み立て開始から一週間ほどかけて、ようやく『羽ばたき鳥形飛行機』が完成しました。
この『羽ばたき鳥形飛行機』は、土台部分に回転用の歯車があり、手前の回転ハンドルを回すと
主翼が上下に可動すると同時にパイロットの手足が前後に可動します。写真は、パイロットの膝
が曲がり、主翼が下がったところです。
さらに回転ハンドルを回すと、今度はパイロットの膝が伸びて主翼が上がります。
私には撮影技術がなく、動画でお見せできないのが残念です。
完成した『羽ばたき鳥形飛行機』は、現在、県立美術館2階のブックショップ内の中央付近に
完成見本として販売商品とともに展示されています。
県立美術館にお越しの際は、あなたも是非、主翼の回転ギミックを ”体験” してみてください。