2017年08月29日(火) 作れちゃう
8/27に行われた、わくわくアトリエ「シルクスクリーンでプリントしよう!直虎ちゃん&家康くん」の様子をご紹介します。この講座では、「戦国!井伊直虎から直政へ」展にちなみ、直虎ゆかりの地、浜松のマスコットキャラクター「出世法師直虎ちゃん」と「出世大名家康くん」を、シルクスクリーンという技法で巾着やTシャツにプリントしました。(浜松市からキャラクター使用の許可を得ています)
はじめに、シルクスクリーンのしくみについて簡単なレクチャーを受けました。講座用に用意した版は、直虎ちゃんが4版(4色)、家康くんが5版(5色)、になります。今回の講座は摺りが中心になるため、摺る順番やインクの量など、先生の説明をよく聞いておかなければなりません。
まずは一版目を摺ります。下の写真は直虎ちゃんの顔や手といった、肌の部分になります。目鼻口のパーツは最後に黒いインクで摺るため、はじめに、うすだいだい色のインクで摺ります。インクを置く場所や量の加減も注意するポイントです。
こちらの彼は家康くんの一版目が摺りあがり、ドライヤーで乾かしているところです。青いマスキングテープを2箇所につけて、版を重ねる目安の「トンボ」印が、巾着に写らないようガードしています。
つづいて、家康くんの4版目です。①顔のうすだいだい色→②着物の青色→③緑色→④ほっぺや胸のみかんマークの赤色の順に摺っています。
最後に顔の表情を黒いインクで摺ります。ちゃんと綺麗に摺れているかな…どきどき。
じゃーん!!直虎ちゃん巾着が完成しました。インクがズレないように版を重ねていくのが難しいのですが、とても綺麗な仕上がりです。
2人とも完成!直虎ちゃんの巾着もふたつ並んで、いい感じの仕上がりです。インクが手につかなくなるまで、よく乾かします。
仕上がったら、作品にあて布をしてアイロンをします。こうすると、お洗濯の時に色落ちしにくくなります。
シルクスクリーンでプリント体験、いかがだったでしょうか?Tシャツやポスターなど、私たちの身近でもよく使われている技法ですが、実際にやってみると、その仕組みがよくわかります。自分で作ったものは愛着もひとしおのことと思います。手作りのご当地キャラクターグッズ、大切に使ってくださいね。
2017年08月23日(水) 作れちゃう
実技室プログラムのお知らせです。
今年も年に一度の大イベント「みんなで!ドット若冲」が8月19日・20日の2日間にかけて開催されました。
このプログラムでは、当館所蔵の伊藤若冲《樹花鳥獣図屏風》に用いられる、「マス目描き」という技法の特徴を生かして、7×7cmの四角いピースにみんなで絵を描き、約10m×5mの大きな作品に仕上げます。毎年一扇ずつ仕上げて、今年は十二扇目(12年目!)になりました。今年は夏休み中の開催で、40名近い方々に参加いただきました。さて、どんな作品が仕上がったのか、当日の様子を追いながらご覧ください。
【1日目】
まずは作品を見てみよう!ということで、伊藤若冲の《樹花鳥獣図屏風》を鑑賞しました。今回はレプリカでの鑑賞となりましたが、日本画担当の学芸員さんの解説を聞きながら作品を鑑賞しました。よく見てみると、見たことがあるようでないような動物や、水に浸かっている馬は何なのか…など、改めて見て考えてみると、不思議な動物がたくさん描かれています。今回挑戦する部分は、去年の白像の左隣の虎がいる部分です。この部分には虎の他にも何やら青い動物がいますが…実は麒麟と思われる動物でした。動物園にいるキリンとは程遠い姿に子ども達がざわつきます。
一通り作品を鑑賞した後、グループ分けをしました。一扇をさらに分割し、グループごとにどの部分を描くか決めます。このグループ分けで、一緒に来た家族や友達は、バラバラのグループになります。最初はちょっと寂しいかもしれませんが、作品を作っているとあっという間に新しいお友達ができちゃいます!まずは自己紹介をし合い、グループに名前付けまでしました。そして描きたい部分を選び、早速制作に取り掛かります。
みなさんが書いているのは、マス目になるピースです。絵を描く面の裏に、そのピースが全体図のどの部分にあたるか、住所となる番号を書きます。1パートで310ピースあるので、手分けして進めます。
描き終えたら、書き間違えをチェックしながら順番通りに並べていきます。
並べたら下書きの線を入れ、さっそく色塗りを始めます。
色は主に子ども達が一生懸命混色してくれました。
大人、子ども、初参加のかたや、常連のかた、それぞれができることを分担して進めていきます。
年々リピーターの方々が増え、とても手際よく制作が進まりました。
なかには午前中で1パートがほとんど終わっているようなグループも!
お昼をはさみ、引き続き取り組みます。
この顔はもしかして…
【2日目】
昨日描いた部分から引き続き取り組みます。この後のエントランスでの展示に向けて、急いで乾かします。今回使っているのはアクリル絵の具で、水分量が低いと乾かないので、微妙な調節ですが薄めに溶いて塗っていきます。時間に余裕のあったグループは、クオリティを上げて、細部までしっかり塗れていました。
そしてついに、展示作業へ!
黙々と並べ…
やっと!!
完成!!!
圧巻ですね!全体の大きさは約10m×5m、ピースの個数は約8700個あります。参加者の皆さんからは、達成感が気持ち良いとの声が多くよせられました。
下の部分は、「ちょっと体験 ドット若冲マス目描き」(8/16-18開催)で、300名以上の方々に描いていただきました。みなさま、たくさんのご参加ありがとうございました。
残すところあと数回になりました。今回参加してくださったかたも、逃してしまったかたも、次回をお楽しみに☆
2017年08月04日(金) 作れちゃう
実技室プログラムのご案内です。
7月29日(土)、30日(日)の2日間にかけて、実技講座の銅版画編、「名画を模写する」を開催しました。今回の講座では、収蔵品展に出品されていたジャック・カロ作《ボヘミアン》という銅版画の作品を、エッチングという技法を用いて模写をしました。
今回は実物をそのまま模写するのではなく、拡大した全体図から気に入った部分だけ模写しました。
カロの描写を追って、一体どんな作品が出来上がったのか、2日間の様子をご覧ください。
<1日目>
講座の先生は、創作週間でインストラクターをしていただいている、版画家の柳本一英さんです。
普段お使いになっている様々な道具をお持ちいただきました。
今回みなさんには、ニードルという針のように尖った道具を使って描写していただきましたが、このように他にも沢山の道具があり、それぞれの描写に合わせて使い分けます。
今回の講座では、銅版画を初めて体験する方が大多数だったので、まずは「銅版画とは?」というお話しから始まり、20分程度で描写から刷りまで一通りのデモンストレーションを行いました。初めてのプレス機、「おぉ~」という歓声が上がります。
何となく仕組みを分かっていただいたところで、柳本先生と展示室へ向かいました。
作品を模写する前に、まずは作品について知識や思いを深めます。
収蔵品展の銅版画コーナーを担当した南学芸員の解説を聞きながら、ジャック・カロの作品を中心にじっくり鑑賞しました。
今回模写したジャック・カロ作の《ボヘミアン》は、4枚からなる作品で、当時のジプシーたちの生活が描かれています。画面の中にありとあらゆるものが緻密に表現されており、小さい画面ながら迫力があります。スタッフも本講座の準備で作品を何度も見ていたつもりでしたが、解説を聞きながら新たな発見がいくつもありました。
肉眼だと見難いほどの細密な部分があるので、ルーペ等を使ってカロの筆致を追います。美しいハッチングや、遠近感の出し方、影の付け方をよく観察します。鑑賞しながら、模写をする部分を考えますが、たとえば木1本にしても、「こんなに描き込まれているのね…」と思わずため息をついてしまうほど…。
ちょっとした疑問を南学芸員や柳本先生にうかがいながら、あっという間に鑑賞タイムが終わりました。
銅版画を見る時、描かれている主題に目が行きがちですが、こうして技法に着目しながら筆致を追うと、何となく作家の人柄や当時の様子を生々しく感じられるような気がします。南学芸員のお話にあった歴史的背景も踏まえつつ、当時の様子を想像しながら鑑賞しました。
描写する部分を考えつつ、一旦お昼をはさんで休憩しました。
午後からグランドという防食膜を銅板の上にひく作業から開始です。
グランドを乾かす必要があるので、待ち時間の間に下絵作りをします。今回、遠近感を出すために手前の太い線を赤い線、奥や細かい描写を青い線で分けて下絵を作りました。
下絵が完成したら、乾いたグランドに転写をして、ニードルで描画を始めます。
<2日目>
ニードルで続きの描画をするところから開始です。
防食膜をはがしたところが腐食され、線になるのですが、慣れない道具につい力が入ってしまいます。この「膜をはがす」という感覚が難しいのです。
力が入ってしまうと線がガタついてしまうので、なるべくスッと線をひくように心がけます。
描画し終えたら、腐食をします。
この塩化第二鉄液という液体に浸すことで腐食されます。この腐食をする時間によって線の太さが変わります。表したい線によって腐食時間を変える必要があるので、柳本先生と相談しながら最短で1分、最長で20分の腐食をさせました。
腐食し終えたらインクをつめる工程に移ります。写真の様にウォーマーという温かい箱の上で版を温めながらインクをのせると、細い溝にもインクをなじませることができます。
そして、寒冷紗という荒目の布で版を擦って、腐食で出来た溝にインクを入れ込みます。
この後、余分なインクをふき取るのですが、拭き取りすぎても白くなってしまうので、この拭き取り加減に悩みます。プリンターという職人がいるほど難しい工程です。
準備が整ったら、いざテスト刷りへ!緊張の瞬間です。
このように今回の講座では、【 描画 → 腐食 → 印刷 】の工程を繰り返して、版の描写を充実させていきます。
この工程を1人およそ3~4回、多い人は5回行いました。多種類の薬品を工程ごとに使う複雑さがありますが、最後の方は皆さん一人でスムーズに作業されていました。
1回目に刷ったものとカロの作品を見比べながら、足りない部分を描き足します。拡大してもなお繊細な描写が多く、「やっぱりカロってすごいんだな…」という声がちらほら聞こえました。皆さん、カロに負けじとお昼休憩に展示室に戻って観察し直し、制作を続行させるほど熱心に取り組まれていました。
左から1回目、2回目になっています。このように並べてみると描写の実具合が分かりますね。
最後の方は、繊細な付け足しが多かったので、腐食時間を柳本先生と相談しながら決めました。
この刷りも神経を使いながらやる作業なので、4回目、5回目になると疲労がうかがえました。
刷り上がったら、最後はみんなで鑑賞会です。お一人ずつ感想を述べ、先生からも一言いただきました。
参加者の皆さんからは、「難しかったけど楽しかった」という声が多く寄せられました。
技術を要する工程が多くあったものの、それぞれの味のある作品が仕上がりました!
それでは仕上がった作品の一部をご紹介します。
皆さん細い線と太い線がしっかり描き分けられているので、メリハリがあって雰囲気が出ていますね!
スタッフが試作した時は太い線を出すのに苦労しましたが、これほど太い線や黒がしっかり出ると、何度も腐食の工程を繰り返した甲斐があったと思います。何度も同じ工程を繰り返すことは特に初心者の方にはまさに修行だったと思われますが、きっとエッチングの醍醐味を味わっていただけたのではないでしょうか。今後は技法を体験したからこそ分かる視点で鑑賞を楽しんでいただけたらと思います。
2017年06月30日(金) 作れちゃう
静岡県立美術館では、ほぼ毎月1回のペースで、一般の利用者の方々に実技室をアトリエとして開放する、「創作週間」というプログラムを実施しています。実施期間は、水曜~日曜日の5日間に渡り、日本画、木版画、銅版画・リトグラフの専門的な知識を有する講師が指定の曜日に在室しています。今回は、日本画のステップアップ講座として、「創作週間」でインストラクターを担当されている、日本画家・日下文先生による、絹本(絵絹に描く)講座が開催されました。
昨今、美術学校や教室等で本格的に日本画を習われた方でも、絹本を用いて制作する機会はなかなか少ないようです。1日目の午前中は、絹本(けんぽん)の特色を参考作品とともに解説し、絵絹(えぎぬ)に描いた場合と、和紙に描いた場合で得られる表現の違い等に着目していただきました。また、日下先生がご自身の制作の際、写生のために訪れた「蓮花寺池公園」(藤枝市)でのお話を通して、蓮の花の特徴や、その周辺に棲む生き物についてイメージをふくらませていただきました。
下の写真は、日下先生やスタッフによる、絹本の参考作品です。日本画の作品に見られる、「ぼかし」(上段右と下段左と中の背景グラデーション)や「たらしこみ」は、紙本にも用いられる技法ですが、絵絹に施す方が断然、美しい仕上がりになります。また、「裏箔」(下段右。裏に金箔貼)や「裏彩色」といった技法は、透けるという特徴を生かした、絹本ならではの技法ともいえます。
絹本の基本的な特徴を理解したところで、ご自身の制作に入ります。本来ならば、実際に蓮を見て写生した方が、より気持ちの入った作品に仕上がるですが、この時は開花前ということもあり、こちらで用意した蓮や水辺の生物の写真の中からモチーフを選んでいただきました。
鉛筆や色鉛筆を用いて写生をします。こうして出来上がった下絵をもとに、蓮や虫といったメインになるモチーフの大きさ、配置場所、余白の取り方…等々、画面構成を試みます。
構成が決まり下絵が完成したら、本番用の絹本に墨で線を写し取っていきます。絵絹は透けるため、画面の下に下絵を置くと、そのまま線を写すことが可能です。これを「透き写し」といいます。また、墨で輪郭線を引くことを「骨描き」(こつがき)といい、この線が作品の骨格となります。慎重に、でも伸びやかに…使い慣れない筆と対話しながら描きすすめます。
つづいて淡墨を重ね、モチーフに濃淡をつけていきます。この墨の濃淡をしっかり施すことで、色を置いた時に、より深みのある表現が生まれます。
骨描きして墨の濃淡を施したもの。絹が透けて裏の資料が見えています。この透ける性質を生かし、着彩していきます。
墨による工程を終えた方から、色を用いた着彩に入ります。日下先生から、絵の具の扱い方や、絹本に適した着彩方法のレクチャーを受けました。
日本画に用いる代表的な絵の具として、岩絵具(いわえのぐ)や水干絵具(すいひえのぐ)といった顔料が挙げられます。(下の写真では、左の一列のみが岩絵具で、他は水干絵具です。岩絵具はとても高価なのです…)どの色にも美しい和風の名前がついていて、眺めているだけでも楽しいです。基本的に、岩絵具は鉱石を原料とし、水干絵具は土を原料とします。いずれも微粒子の色の粒なので、このままでは絹や紙に定着しません。
これらの顔料に、膠(にかわ)という接着剤を混ぜて使用します。膠は、古くは古代壁画の時代から使用され、現在でも日本画の制作においては、画面と絵具を接着するために用いられています。原料は動物性コラーゲン(骨、皮、腱などを煮出し固めたもの)で、日本画では牛や鹿の膠、洋画では兎の膠なども使用されます。下の写真は水干絵具を作っているところです。小鍋に入っているのが膠液で、これを顔料に加えてよく練り、水で調整します。
下の写真の右のお皿は、粒子の状態の水干絵具です。左のお皿は膠と水で溶いた状態です。同じ色なのですが、溶く前と後で色味が異なります。ちなみに、画面に着彩して乾くと粒子の時の色に戻ります。ですので、仕上がりの色は乾いた状態で考えなくてはなりません。悩ましいですね…。
白には胡粉(ごふん)を用います。胡粉もまた、古くから日本の絵画に使用されてきました。牡蠣や蛤やほたての貝殻が原料で、風化させ、微粒子化したものが、グレード別に販売されています。顔料と同様、膠で練って使用します。
チューブから出す絵具と異なり、日本画の 絵具は数色用意するにも時間を要します。絵具を練りながら心を落ち着かせ、作品に向き合う大切な時間です。絵具が出来上がったところで、まずは胡粉(白)を、絵絹の表側からメインとなるモチーフに塗りました。蓮の花はピンク色ですが、先に胡粉でベースをつくることで、後から重ねる色の発色や定着が良くなります。
つづいて絹本を裏返し、2色以上の色を用いてぼかします。裏面からぼかしを施すと、表面へ着彩した胡粉への影響も少なく、よりやわらかい印象に仕上がります。下の写真は、緑系と青系の水干を上下から塗り、中段は水刷毛でぼかしています。ぼかす時には、色のついた刷毛、水を含んだ刷毛、乾いた刷毛の3種類を素早く、器用に使い分けなければ上手くできません。
4色を用いて、繊細なグラデーションを施した方もいらっしゃいました。配色も見事です。
下の写真は、表から胡粉を塗った後、ぼかしをせずに裏彩色を施した作品です。これから、白くなっている蓮の花の部分に色を施していきます。
日本画経験者の方には、絵絹の裏側から金箔を貼る「裏箔」にも挑戦していただきました。
箔を貼って表に返すと、下の写真のようになります。絹目で光沢が控えめになり、上品な背景下地が出来上がりました。背景の目処が立ったところで、1日目を終了しました。
2日目は、10:30の開始からもくもくと着彩をすすめます。
日本画の絵具は、完全に乾いてからでないと色を重ねられないため、塗っては乾かし、乾かしては色の様子を見て…仕上げたいイメージに近づけていきます。せっかちな方には到底向かない技法ですね。
お昼休憩をはさみ、午後3時半には、途中経過の発表会を行いました。急いで仕上げるものではありませんし、この2日間で仕上がらなくても、今後の「創作週間」で続けて制作することが可能です。全員分の作品を並べ、おひとりずつの感想と、日下先生からアドバイスをいただきました。
こういった制作工程を体験すると、美術館に展示されている大作など、一体どれほどの時間と労力がかかっているのだろうと、改めて考えさせられます。折しも7/14(金)~、当館で「日本画入門!」が開催されます。(「白の表現力」、「新収蔵品展」同時開催)この展示では、日本画の画材、技法、形式という3つのテーマに沿って、江戸時代から近代にかけて描かれた作品、約30点をご覧いただけます。絹本講座にご参加下さった皆さまも、このブログを読んで下さった方も、きっと、日本画をより身近に、面白く感じていただけることと思います。ぜひ足をお運び下さい。
2017年06月18日(日) 作れちゃう
6月初頭、現在開催中の展覧会「黄金のファラオと大ピラミッド展」に関連して、こども・親子向けプログラム、わくわくアトリエ「太陽の船をつくろう」が開催されました。
はじめに、本展覧会を担当している新田学芸員より、「太陽の船」についての解説がありました。古代エジプトの墓には、木製の船の模型や実物の船が解体されたかたちで埋葬されていたようで、近年、これらの発掘と復元による調査が行われています。ナイル川とともに生きた古代エジプト人にとって船とは、生活から祭祀に至るまで、重要な役割と意味を持っており、死者が来世で太陽神ラーとともに昼夜天空を駆けるための「太陽の船」も、そういった思想の反映と考えられています。
今回のワークショップでは、この「太陽の船」にちなんで、参加者の皆さんの自由な発想でオリジナルの船を制作していただきました。木材提供は、静岡県下で事業を展開している常木教材株式会社にお願いしました。本展覧会会場に展示されている「太陽の船」の模型は、吉村作治氏の依頼により、常木教材の関連会社でもある、株式会社ウッディージョーが制作しました。(ミニチュア版をショップで販売中です)図らずも共通のご縁をいただき、ピラミッドパワーを感じずにいられません。
それでは早速、「太陽の船」づくりスタート!実技室に用意された、円や立方体、三角形など、色々な形をした木材をボンドで接着して船を形づくります。前回と同様、設計図は用いずに、木材同士を組み合わせることで生まれる形のバリエーションによって、立体を造形する面白さを味わっていただきました。
午前・午後の2回制のため、制作時間は正味1.5時間程度でした。大人の方は慎重なので、すぐには動き出しません。子どもたちは好奇心も相まって、まずは触れてみて、といった印象を受けました。最初は目移りしてしまうものの、見た目と感触で、直観的に必要な形を選んでいく様子に、感心してしまいます。選ぶ形も、一様ではありません。
スプーンみたいな不思議な形の木材をいくつも用意。一体、何に使うのでしょう…?
持ってきた木材をあれこれ色々な方向から組み立てていると、作りたい形や、必要なパーツが見えてきます。形が決まったら木工用ボンドで接着していきます。
丸い形の木材ばかりをくっつけている方もいました。モダンな船になりそうです。
最初は子どもの付添いで来たのに、ついつい一緒になって熱中してまうお父さんやお母さんの姿があちこちで見られ、微笑ましかったです。
集中していると時間が経つのはあっという間です。1.5時間という短い時間でしたが、ほとんどの方が完成に近い形で出来上がりました。全部ご紹介できないのが残念ですが、十人十色の「太陽の船」をご覧ください。
潜水艦のような船。こんな「太陽の船」があっても素敵ですね。設置台もかっこいい!
先に登場した「スプーンみたいな不思議なかたち」は、船のオールに使われていました。船体にオール、予備用のオール、甲板の救命用ボートにもオールが装着されています。とても早く漕げそうです。
こちらの船は櫓×階段のスタイル。どことなく古代の雰囲気が漂っているように感じます…。
幾何学形態の組み合わせが斬新な船。制作台として使用していた椅子のカラフルさも手伝って、モダンアートの水面に浮かんでいるようです。
超大型船が登場。船頭と船尾のデザイン、オールの付け方も秀逸です。
こちらは大人の方の作品です。なんと、飛んでるヘリコプターとヘリポート付き!もはや「太陽の船」ではなさそうですが、素晴らしい出来映えです。
上は、小学校低学年の男の子が作った船です。どっしりと安定した設置台を作るところから、一人でもくもくと、あっという間に仕上げていく様子に感心しました。
こちらは、女の子が作った船です。帽子を被った乗組員や、船上の食事の様子が、なんとも可愛らしいです。
木の色味を生かした、豪華客船のような船。宝箱付きです。本物の「太陽の船」にも、きっと黄金のお宝がたくさん載っていたことでしょう!
今回の木材工作は「太陽の船」というテーマを設けて制作に取り組んでいただきましたが、出来上がってみると、それぞれに個性が光っていました。また、子どもたちには、自分の作った「太陽の船」のストーリーがあり、そのお話を聞かせてもらうのが、なにより楽しかったです。
次のわくわくアトリエは、8/27(日)に実施予定です。シルクスクリーンの技法を用いて、今話題のあの人をプリントする予定です…!詳細は1か月前に静岡県立美術館HP、またはフェイスブックページに掲載いたします。親子でのご参加をお待ちしております。